
『RPG研究』第5号は,テーブルトーク(TRPG)およびライブアクション(LARP)のロールプレイングゲームにおける「アクセス」と「アクセシビリティ」という基本的なテーマに焦点を当てています.本特集号では,ロールプレイングゲームにおける構造的および体験的な障壁を検討するため,「アクセス」の相互関連性を強調し,包括性を実現するための多面的な課題と機会を探求しています.ここで言う「アクセス」とは,性別,人種,社会経済的背景といったアイデンティティや属性にかかわらず,誰もがゲームに参加する権利や能力を指します.一方,「アクセシビリティ」は,アクセスの多様な次元と交差する障害に関連した要素を含む概念です.
本号の寄稿は,TRPGが自閉症スペクトラムの社会的支援を目的としたプラットフォームとしてどのように活用されるか,あるいは発達障害のある子どもたちの放課後プログラムでコミュニケーション能力をサポートする方法に関する事例を取り上げています.また,ロールプレイングゲームにおける植民地主義的トロープへの批判や,クリップ・セオリを通じた校正フレームワークの再構築を試み,TRPGにおける柔軟な進行ペースの重要性を強調する研究も含まれています.そのほか,成人教育や包括的な物語を通じた共感の構築,ロールプレイングゲームにおける感情的アクセシビリティの批判的分析といったテーマにも踏み込んでいます.
本号は,「アクセス」と「アクセシビリティ」の普遍的な概念を超え,適応的で包括的なデザイン原則を採用する重要性を強調しています.ゲームにおける社会的構造や偏見を問い直すことで,多様でグローバルな参加者に向けたロールプレイング空間の再構築に向けた動的な対話を読者に促しています.本特集号は,行動を起こすための呼びかけであると同時に,進化し続けるアナログ・ロールプレイングゲーム研究分野における未来の学術的探求への足掛かりとしても機能しています.
表紙画像 © Gwendoline Lefebvre (Game in Lab)
JARPS 2024 シンポジウムのビデオ録画