本誌2025年号の発刊の趣旨は,「Tools of the Trade(七つ道具)」をテーマに,アナログ・ロールプレイング・ゲームの物質的次元を検討するものである.前号の「アクセスとアクセシビリティ」に関する議論を発展させ,本号では,物体,環境,技術がいかにして遊びを共同生成するかを探究する.関係的物質主義の視座から,本趣旨は,サイコロ,ルールブック,コスチューム,小道具,さらにはAIツールまでもが単なる付属物ではなく,共創者として創造性,包摂性,学習を形づくると論じる.アクセシブルなルールブックデザイン,LARPにおける身体的物語表現,ライブプレイにおけるデジタル技術の導入といった多様な事例を通じて,本号の各論文は多様な物質的エージェンシーの形態を考察する.それらは総じて,アナログ・ゲーミングにおいて有形と無形がいかに交錯するかを明らかにし,本領域を支える道具,実践,関係性の再考を読者に促すものである.