
本稿では,ゲームマスター,特にダンジョンマスター(DM)の位置づけについて,実践論の観点から考察する.DMハビトゥスと呼ぶ概念,すなわちダンジョンマスターの役割を担う個人がその役割を強固にするために制定する,ゲーム体験から生じる「深く染み付いた習慣,技能,身体的気質」の概念を作り出すことのためにピエール・ブルデュー(1984)のハビトゥス理論を用いる.「協力者」,「語り部」,「神性」という考え方の間に断絶があるのではなく,卓上ロールプレイングゲーム(TRPG)という社会生産の場がダンジョンマスターに与えた権威が,ゲーム空間の社会構造を維持するために,これらの異なる役割を適切に果たす能力を与えていることを論じている.