インクルーシブ教育および教育者の共感の発達は,障害を持つ学生を支援するために極めて重要である.ろう者は,一般的な教育環境において独自の困難に直面することが多く,教育者の意識と共感が高まることで利益を享受する.本研究は,アシスタント言語教師(ALT)のろう者に対する共感および意識のレベルに与える,ロールプレイングゲーム「Sign: A Game About Being Understood (サイン)」の影響を探求するものである.
日本の地方県に在住する4名のALTを対象とした混合法的アプローチを用いた.質的データは,事前・事後のアンケート調査および自由回答形式の質問,並びにグループ面接を通じて収集された一方で,量的データは「対人反応性指数(Interpersonal Reactivity Index, IRI)」を用いて収集された.質的データは,ろう者への共感と意識の増加,コミュニケーションの課題,およびゲームのメカニクスという3つのテーマに焦点を当ててテーマ分析によって分析された.
参加者の回答は,介入後にろう者の体験に対する共感と意識の向上を示した.本研究は,教育者養成プログラムにおける体験的学習ツールの可能性を強調しており,よりインクルーシブで支援的な教育環境を醸成する上での意義が示唆される.