
本研究では,TRPG活動を通じた自閉スペクトラム症のある子ども・若者(ASD児者)自身の社会的コミュニケーション支援の効果およびTRPG活動の余暇活動としての満足度とその意義と可能性について検討することを目的とした.第1研究では,ASD児4名を対象にTRPGを実施し,初期の活動と最後の時期の活動での会話内容を比較した.その結果TRPG場面でASD児たちの自発的な発話が有意に促進されていることとTRPG中の話し合い場面での合意形成の数に明らかな増加がありポジティブな変化が見られたことが明らかになった.
また第2研究では,TRPG活動に参加したASD児者51名を対象にTRPG活動実施の前後にQOL尺度への回答を求めた.その結果,QOL総得点およびすべての下位因子で得点が伸び,TRPGがASD児者にとって満足度の高い余暇活動で,QOL向上にも影響があることが明らかになった.また,ASD児者10名に面接調査を行ったところ,彼らがTRPG活動に満足しており,TRPGを通じた自身のコミュニケーションの変化を自覚していることも明らかになった.TRPG活動はASD児にとって満足度の高い活動であり,活動を通じて彼らの社会的コミュニケーション促進する可能性が示唆された.(英語のみ)