Case Report | 実践報告

NotebookLMを活用したLARPイベント参加者サポートツールの
実践レポート

Moroishi Toshihiro | 諸石 敏寛

LARP Promotion Organization CLOSS | 体験型LARP普及団体CLOSS

How to Cite:

Moroishi, Toshihiro. 2025. "NotebookLM wo katsuyō shita LARP ibento sankasha sapōtotsūru no jissen repōto" [Field Report on the Practical Application of NotebookLM as a Support Tool for LARP Event Participants]. Japanese Journal of Analog Role-Playing Game Studies, 6: 63j-70j.

引用方法:

諸石 敏寛. 2025.「NotebookLMを活用したLARPイベント参加者サポートツールの実践レポート」『RPG学研究』6号: 63j-70j.

DOI: 10.14989/jarps_6_xx

要約

[0.1] 本レポートは,日本で実施されたLARPイベント「Quest of Labyrinth」および「Grand Cross Crusade」におけるGoogleのAIサービス「notebookLM」の活用事例を報告するものです.その主な目的は,この実践報告に基づき,以下の二点について論じることにあります.第一に,小規模LARPイベンターの運営負担をnotebookLMがいかに軽減できるか.第二に,イベント内容の理解促進やキャラクター作成支援など,ユーザーの参加体験をnotebookLMがどのようにサポートし得るか,その可能性を考察します.

[0.2] キーワード:LARP,LLM,主催

Abstract

[0.1] This report documents the application of Google’s AI service, “NotebookLM,” at the larp events “Quest of Labyrinth” and “Grand Cross Crusade” held in Japan. Its primary purpose is to discuss two key points based on this practical application. First, how NotebookLM can reduce the operational burden on small-scale larp event organizers. Second, to explore the potential of NotebookLM to support and enhance the participant experience, such as by facilitating understanding of the event content and assisting with character creation.

[0.2] Keywords: larp, LLM, facilitation

1. はじめに

[1.1] 本レポートは,日本で実施されたLARPイベント「Quest of Labyrinth」(最初の実施年: 2022) および「Grand Cross Crusade」(最初の実施年: 2025) におけるNotebookLM(Google)の活用事例を報告するものである.その主な目的は,この実践報告に基づき,以下の二点について論じることにある.第一に,小規模LARPイベンターの運営負担をNotebookLMがいかに軽減できるか.第二に,イベント内容の理解促進やキャラクター作成支援など,ユーザーの参加体験をNotebookLMがどのようにサポートし得るか,その可能性を考察する.

[1.2] LARP(ライブアクションロールプレイング)イベントの成功は,参加者一人ひとりの積極的な関与と深い没入感に大きく依存する.そのため,参加者がイベントの世界観やルールをスムーズに理解し,安心してキャラクターを演じられるようにするためのサポート体制は極めて重要である.特に,新規参加者にとっては,膨大な情報量(世界観,ルール,キャラクター作成ガイドラインなど)が参入障壁となることが少なくない.また,経験者であっても,特定の状況におけるルールの解釈や,複雑な世界設定に関する疑問が生じることは頻繁にある.

[1.3] 従来,これらのサポートは,イベント主催者や運営スタッフ(GM:ゲームマスター)が人的リソースを割いて対応してきた.しかし,特に小規模なイベントにおいては,以下のような課題が顕在化しがちである.

これらの課題を解決し,より質の高いLARP体験を提供するためには,効率的かつ効果的な参加者サポートシステムの構築が求められている

[1.4] NotebookLMを参加者サポートツールとして活用する着想に至った経緯:前述のようなLARPイベント運営における参加者サポートの課題,特に小規模イベントにおけるリソースの制約を背景に,より効率的かつ質の高い情報提供手段の模索が始まった.従来の人的対応では,情報の網羅性,即時性,均一性の担保に限界があり,これが参加者の満足度や運営の負担に直接的な影響を与えていた..

[1.5] そのような中,Googleによって開発されたAI搭載のノートツールNotebookLMの存在を知った.NotebookLMは,ユーザーがアップロードしたドキュメントに基づいて質問応答や要約生成を行うことができるという特徴を持っている.この機能が,LARPイベントの膨大なルールブックや世界観設定資料といった情報群と非常に親和性が高いと考えられた.

[1.6] 具体的には,以下の点に着目し,NotebookLMを参加者サポートツールとして活用する着想に至った.

[1.7] これらの仮説のもと,実際のLARPイベント「Quest of Labyrinth」および「Grand Cross Crusade」においてNotebookLMを試験的に導入し,その実用性と効果を検証する運びとなった.

2. NotebookLMの概要と選定理由

[2.1] 本イベントで活用したNotebookLMの主な機能は,①アップロードされた複数ドキュメント(ルールブック,世界観設定資料等)を横断的に参照して質問に回答する機能,②特定のキーワードに関連する情報をドキュメント内から抽出・提示する機能,③参加者からの自然言語による問い合わせに対して,関連性の高い情報源を提示する機能である.これらの機能により,参加者はあたかも経験豊富なGMに質問するかのように,必要な情報へアクセスすることが期待された.

[2.2] LARPイベントの参加者サポートにおける課題解決の手段としてNotebookLMを選定した主な理由は,その「情報アクセスの容易性」「特定の知識ベースに基づく応答」「自然言語による対話能力」そして「導入・運用の手軽さ」にある.

[2.3] なお,本レポートで取り上げる「Quest of Labyrinth」は2025年3月に実施され,その準備とNotebookLMの初期検証は主に同年2月から3月にかけて行った.一方,「Grand Cross Crusade」は2025年9月に実施され,こちらの準備およびNotebookLMの本格運用は同年5月以降,より開発が進んだ段階のものを利用している.このため,両イベントで活用したNotebookLMには時期的な差異による性能や挙動の違いが存在した可能性があり,以降の評価においてはその点を考慮に入れている.

3. 活用方法と準備:NotebookLMへの情報入力

[3.1] NotebookLMには,まずイベント関連の各種ドキュメントを読み込ませた.「Quest of Labyrinth」に関しては,基本のルール,アクションルール,戦闘ルール,世界観とシステム,キャラクター作成とスキル,その他補足資料,QoL_Q&A,世界観補足資料を入力した.また「Grand Cross Crusade」については,グランドクロス・クルセイド基本情報を入力した.

[3.2] これらの情報を入力するにあたり,いくつかの工夫を行った.まず,複雑なルール項目については平易な言葉に言い換え,箇条書きを多用してNotebookLMが解釈しやすいように編集した.次に,過去のイベントで頻出した質問とその回答をリスト化し,多様な言い回しにも対応できるよう複数の質問パターンを登録した.さらに,長文の世界観資料については,重要なキーワードや登場人物,地名などに見出しを付け,関連情報を容易に紐づけられるよう構造化した.これらの作業により,NotebookLMが効率的かつ正確に情報を参照できる環境を整えたのである.

4. 参加者への提供方法と利用シーン

[4.1] 参加者への提供に際しては,NotebookLMで作成したノートブックへの専用URLをイベント参加者専用のDiscordサーバーを通じて事前に共有した.

[4.2] 想定された利用シーンとしては,主に次のようなものがあった.

[4.3] 利用促進のために,NotebookLMの利用をアナウンスし,その工夫を強調した.

5. 運営側の活用

[5.1] 運営側では,NotebookLMを問い合わせ対応の一次窓口として活用した.参加者からの質問に対しては,まずNotebookLMを参照するように文章で案内することで,スタッフが直接対応する件数を削減したのである.特に,頻出する基本的な質問やルール確認についてはNotebookLMが効果的に機能し,スタッフの負担軽減に貢献した.

[5.2] また,NotebookLMは情報の均一化と迅速な提供にも寄与した.スタッフ間でルール解釈や世界観情報に齟齬が生じることを防ぎ,常に公式情報に基づいた一貫性のある回答を迅速に提供することが可能となったのである.これは,特に複数のスタッフが交代で対応する場合に大きな効果を発揮した.さらに,NotebookLMはアップロードされた公式ドキュメントのみを参照するため,特定の情報ソースに基づく正確な回答が担保され,誤った情報や古い情報が参加者に伝わるリスクを最小限に抑えることができた.

[5.3] 加えて,新規スタッフやヘルプスタッフに対しては,イベントの基本情報を網羅したNotebookLMを共有することで,短時間で効率的に情報をキャッチアップしてもらう補助ツールとしても機能した.さらに,NotebookLMへの質問の共有を促し,参加者からのフィードバックを分析することで,よくある質問や分かりにくい点を把握し,次回の資料改善やFAQの充実に繋げることも目指されたのである.

6. 実践結果と効果:参加者のフィードバック

[6.1] 参加者アンケートやヒアリングからは,NotebookLMに対する好意的な意見が多数寄せられた.たとえば,表1で示している声があった.一方で,改善要望も見られた.

表1 — 参加者アンケート:良かった点、改善してほしい点.

良かった点 改善してほしい点
「GMに聞きに行く手間が省けて助かった」(多数) 「時々,質問の意図と違う回答が返ってきた」
「夜中でも気兼ねなくルールを確認できた」 「複雑な状況判断や,ルールの組み合わせに関する質問には対応できなかった」
「細かい設定をすぐに調べられて,ロールプレイの参考になった」 「特定の情報が見つからないことがあった(情報が網羅されていなかったか,検索ワードが悪かったのか不明)」
「初心者でも,自分のペースで情報を確認できたので安心感があった」 「スマートフォンでの活用が難しかった」(3月時点ではアプリケーションのリリースがされていなかった)
「他の参加者に聞くのがためらわれるような基本的な質問も,気兼ねなくできた」 「オフライン環境でも使えると嬉しい」

[6.2] 実際の運用では,表2のような質問と応答が見られました.

表2 — 質問と応答.

質問 NotebookLMの応答例
例1: 「『キュア・ウーンド』の魔法の効果と消費MPを教えてください.」 (関連ドキュメントを引用し)「『キュア・ウーンド』は対象のHPを2回復させる魔法です.消費MPは1です.詠唱の最後に魔法名を発する必要があります.」
例2: 「牙の迷宮でHPが0になった場合,どうすればいいですか?」 (関連ドキュメントを引用し)「HPが0になった冒険者や街の人は,タイムアウト・ライトを点灯し,所持していたレンタル品やクエストアイテム等を紛失物BOXに提出後,街へ転送され復活します.また,状態異常:負傷を負い,HPの上限が-2されます.」
例3: 「ソラール族の特徴について教えてください.」 関連ドキュメントを引用し)「ソラール族は太陽神ソウラルの体を捧げられ,世界樹の実から誕生した種族で,魔法が使えること以外は私たちの世界の人間と変わりません.成人は15歳,寿命は約100歳です.」

7. 運営側の効果と所感

[7.1] NotebookLM導入前と比較して,運営スタッフが直接対応するルールや世界観に関する基本的な質問の件数は,Quest of Labyrinthでは約40%,Grand Cross Crusadeでは約70%削減された.これにより,スタッフはより複雑な状況判断や参加者間のトラブル対応,イベント全体の進行管理といった業務にリソースを集中させることができたのであり,問い合わせ対応工数の変化は明確であった.また,参加者へ提供される情報がNotebookLMに集約された公式ドキュメントに基づくため,スタッフによる回答のばらつきや誤情報のリスクが低減し,情報提供の質と一貫性が向上したという点も顕著であった.さらに,特にイベント前日や多くの参加者がルールを見直す期間に見られた質問対応の集中に対しても負荷が軽減され,心理的・肉体的な負担が下がった.夜間の時間帯でも参加者が自己解決できる手段があるという安心感が運営側にも生まれ,対応体制の安定に資したのである.

[7.2] 一方で,予期せぬ効果や逆に発生した問題点も観察された.予期せぬ効果としては,一部の参加者がNotebookLMとの対話を通じて新たなロールプレイのアイデアを得たり,他の参加者との会話のきっかけとして活用したりする場面が見られ,NotebookLMの回答を元に参加者同士でルール解釈について議論を深めるといった副次的な学びの機会が生まれていたことである.また,イベントのクエスト作成においてAIを活用し,より完成度の高いものができるようにヒントや手助けの提供を受けるといった使い方をする参加者も現れた.他方で問題点としては,まず曖昧な質問への対応限界があり,「どうすれば強くなれますか?」といった非常に曖昧な質問や文脈に強く依存する質問に対しては,NotebookLMが的確な回答を生成できないケースがあった.さらに情報の網羅性と粒度に関する課題があり,アップロードしたドキュメントに記載がない情報や,非常に細かいニュアンスについては対応できず,結局スタッフが補足説明を行う必要があった.また,情報が細かすぎたり,逆に大雑把すぎたりすると期待する回答が得られにくいことも確認された.加えて,参加者のITリテラシーの差は無視できず,情報デバイスの操作に不慣れな参加者やAIツールへの抵抗感がある参加者にとっては利用のハードルが高いと感じられる場合があった.会場のネットワーク環境への依存も根本的な課題であり,オフライン環境や不安定な回線ではNotebookLMの利用が困難になる可能性があることが,今回のイベントでは概ね問題なかったものの,今後の懸念点として認識されたのである.

8. 考察:NotebookLM活用のメリット

[8.1] 参加者にとってのメリットとしては,まず情報アクセスの迅速化・容易化が挙げられる.膨大なルールブックや設定資料の中から必要な情報を,キーワード検索や自然言語での質問によっていつでも手軽に探し出すことが可能になり,特に初心者や情報検索が苦手な参加者の負担を軽減できたのである.次に,疑問解消の即時性が向上した.GMや運営スタッフを探したり順番を待ったりすることなく,疑問が生じたその場で自己解決できる場面が増え,ゲームプレイの中断を最小限に抑え,没入感を維持しやすくなった.また,心理的ハードルの低下も重要であり,「こんな初歩的なことを聞いてもいいのだろうか」という遠慮や気兼ねなく質問できる環境が提供されたことで,疑問を抱えたままプレイを続けるストレスが軽減された.さらに,NotebookLMとの対話を通じて関連情報や新たな発見があり,参加者がより能動的に世界観やルールを学ぶきっかけとなった点も見逃せない.

[8.2] 運営にとってのメリットも多面的である.定型的な質問や基本的な情報確認をNotebookLMが肩代わりすることで,スタッフの問い合わせ対応負担は大幅に軽減され,運営スタッフはより複雑な判断が求められる対応やイベントの進行管理,参加者間のインタラクション促進といった,人間にしかできない創造的な業務に集中できるようになった.さらに,全ての参加者に対して公式情報に基づいた均一かつ正確な情報提供が可能となり,スタッフ間の解釈の違いによる混乱を防ぐことができた.イベント時間外やスタッフが手薄になる時間帯でも情報を得られる24時間対応可能な情報窓口を設置できたことは,小規模イベントにおけるリソース不足の補完として機能した.加えて,よくある質問とその回答をNotebookLMに集約しておくことで,イベント前の資料準備や当日のスタッフへの情報共有が効率化され,準備・運営のプロセス全体の整流化にも寄与したのである.

9. NotebookLM活用の課題と限界

[9.1] NotebookLMの課題と限界としては,まず情報の精度や網羅性に関わる点がある.回答精度は入力ドキュメントの質と量に大きく依存し,情報が不足していたり記述が曖昧であったりする場合には,期待する回答が得られない,あるいは誤った解釈をする可能性があった.また,ルールブックに明記されていない例外的な状況や,シナリオの進行によって変化する動的な情報に対しては対応が困難であった.次にニュアンスや文脈理解の難しさがある.参加者の質問に含まれる微妙なニュアンスや,特定の状況下でのみ意味を持つ文脈を完全に理解し適切な回答を生成することは難しい場面があり,「この状況で,あのスキルを使ったらどうなりますか?」といった複合的な質問への対応は限定的であった.また,LARP特有の「雰囲気」や「暗黙の了解」といった明文化されていない情報を読み取る,いわゆる行間を読む能力は備えていないため,そこでの限界も明確であった.

[9.2] 運用上の制約としては,まずオフライン環境での利用不可(通常の場合)が挙げられ,オンライン接続を前提とするためにインターネット環境が不安定な会場や電波の届かない場所では利用が著しく制限される.これは会場選定の自由度を狭める可能性も示唆する.また,参加者のITリテラシーによる利用格差の可能性も無視できず,スマートフォンやAIツールの操作に不慣れな参加者にとってはNotebookLMの利用自体がハードルとなり,情報格差を生む恐れがあった.さらに,対話の柔軟性の限界も存在し,人間のGMのように参加者の表情や声色から疑問の度合いを察したり,対話を通じてより深いニーズを引き出したりする柔軟なコミュニケーションは期待できず,あくまで情報提供ツールとしての側面が強い.最後に,創造性や即興性の欠如があり,ルールに明記されていない状況でGMがその場の判断で裁定を下すような対応は不可能であった.

10. 今後の改善点と展望

[10.1] 今後の改善点としては,まず読み込ませる情報の質と量の改善が重要である.想定される質問を事前に洗い出し,それに対応できる情報をドキュメントに可能な限り盛り込み,特に過去のイベントで頻出した質問や誤解を生みやすかったルール項目については,より丁寧な解説を加えるべきである.同時に,NotebookLMが情報を解釈しやすいようドキュメント構成を工夫し,見出しや箇条書き,キーワードの統一などによって情報の構造化と最適化を進め,Q&A形式のデータを充実させて多様な質問パターンに対応できるようにする必要がある.

[10.2] プロンプトエンジニアリングの工夫も効果的であり,参加者に対してNotebookLMが理解しやすく,かつ的確な回答を引き出しやすい質問の仕方の例を提示し,一度に多くの情報を尋ねるのではなく段階的に質問を重ねることでより深い情報を引き出すテクニックを周知することが望ましい.さらに,他のツールとの連携可能性を検討し,より対話的なインターフェースを持つチャットボットプラットフォームとNotebookLMを連携させることで,参加者がより自然な形で情報にアクセスできるようにし,イベント管理ツールと連携してスケジュールやアナウンスといった動的情報を自動的に取り込む仕組みも整えるべきである.

[10.3] より効果的な活用方法の模索としては,キャラクター作成支援に特化した情報源をNotebookLMに読み込ませ,背景設定やスキル選択に関する相談を強化する方向性がある.加えて,イベント前に参加者がゲーム感覚で世界観を学べるようクイズ形式のコンテンツをNotebookLMと連携して提供する世界観学習モードを構築すること,多言語対応を検討し海外からの参加者に対して主要なルールや情報を多言語で登録して言語の壁を低減することも有用である.最後に,オフライン対策として主要なFAQやルールサマリーをオフラインでも閲覧可能な形式(PDFなど)で別途用意し,NotebookLMが利用できない状況を補完する体制を整えることが展望として重要である.

11. おわりに

[11.1] 本レポートでは,LARPイベント「Quest of Labyrinth」および「Grand Cross Crusade」において,NotebookLMを参加者サポートツールとして活用した実践事例を報告した.NotebookLMは,イベントの膨大なルールや世界観情報を集約し,参加者からの自然言語による質問に対して情報源に基づいた回答を提供することで,情報アクセスの容易化,疑問解消の迅速化に貢献した.運営側にとっては,スタッフの問い合わせ対応負担の軽減,情報提供の標準化といったメリットが確認された.一方で,情報の網羅性やニュアンス理解の限界,参加者のITリテラシーによる利用格差といった課題も明らかになった.これらの結果を踏まえ,今後のLARPイベント運営においてAIツールをより効果的に活用していくための改善点と展望を提示した..

[11.2] NotebookLMのLARPイベント運営における可能性:NotebookLMをはじめとするAI技術は,特にリソースが限られる小規模なLARPイベント運営において,参加者サポートの質を向上させ,運営負担を軽減する大きな可能性を秘めている.ルールや世界観に関する情報提供の自動化は,スタッフがより創造的で人間的なインタラクションに集中できる環境を生み出す.将来的には,キャラクター作成支援,シナリオ分岐の提案,あるいはリアルタイムでの状況判断補助など,さらに高度な活用も期待される.ただし,AIはあくまでツールであり,LARPの根幹である人間同士のコミュニケーションや即興性を代替するものではない.AIの特性を理解し,人間の役割と適切に組み合わせることで,より豊かでスムーズなLARP体験の創出に繋がるだろう.

謝辞

[12.1] 本レポートの作成にあたり,貴重な実践の機会を提供してくださったLARPイベント「Quest of Labyrinth」および「Grand Cross Crusade」において,実際にNotebookLMをご利用いただき,多くのフィードバックを寄せてくださった参加者の皆様に心より感謝申し上げます.また,本ツールの開発元であるGoogle社にも敬意を表します.皆様のご協力なくして,本レポートは完成し得ませんでした.

ゲーム目録

体験型LARP普及団体CLOSS. 2022. 『Quest of Labyrinth』. ボッファー/サンドボックスLARP. インドアサバイバルゲームフィールド. https://dj.closs-larp.com/ (2025年9月30日 取得).
———. 2025. 『Grand Cross Crusade』. ボッファー/ウォーシミュレーションLARP. サバイバルゲームフィールド. https://gcc.closs-larp.com/ (2025年9月30日 取得).