Essay | エッセイ

神々も支配者もいない : 非促進型(GMなし)デザイン枠組みの概要

Ben Bisogno | 美園 勉(ビソノ ベン)

Kyoto City University of Art | 京都市立芸術大学

How to Cite:

Bisogno, Ben. 2022. “No Gods, No Masters: An Overview of Unfacilitated 'GMless' Design Frameworks.” Japanese Journal of Analog Role-Playing Game Studies, 3: 70e-81e.

引用方法:

ビソノ ベン. 2022. 「神々も支配者もいない: 非促進型(GMなし)デザイン枠組みの概要」『RPG学研究』3号: 70j-81j.

DOI: 10.14989/jarps_3_70j

要約

[0.1] 2013年に始まった「ブラック・ライブズ・マター」(黒人の命は重要)の行進をはじめとする分散型社会正義運動の高まりと同時に,ロールプレイングゲームデザイナーは,LARP(ライブアクションロールプレイング)とTRPG(テーブルトップ・ロールプレイングゲーム)の両方で,私たちの遊び方の物語構造に批判的な視点を投げかけてきた.これらの運動が,アウトサイダーとされるアイデンティティを持つ人々,つまり人種的マイノリティのメンバーや,他の人々よりも機会や発信力が少ない人々が,社会の構造的不平等に抗議するのと同様に,従来のゲームの構造的不平等を批判がある.例えば,異なるバックグラウンドを持つ人々にロールプレイングゲームへの関与を躊躇させる一因に「ゲームマスター」ありきの従来のゲームの構造にあると考える.ゲーム体験を調整し促進する「ゲームマスター」は,当然ながら他のプレイヤーと比較して,物語に影響を与える大きな非対称の力を持つ.これは実際の社会における他の非対称(さらには不当な)構造に似ている.こういったゲームは,この役割が常に必要とされるわけではなく,プレイを阻害する可能性に言及している.これに対してゲームマスターのいないゲーム,「GMなしゲーム」は,しばしばプレイヤーによる創造的な道を拡大する可能性を持つ.一人ひとりのプレイヤーの想像力の制限を,ゲームの支配者たるGMから解放するからだ.本稿では,まずゲームマスターの役割に関連する従来の役割・責任を明らかにする.またLARPとTRPGの両方において,公表されているGMなしのデザインが,それらを再構築,再ミックス,また再解釈されて,より平等で,多くの人にとって魅力的な遊びを可能にしていることを論じる.

[0.2] キーワード:解放,アナーキズム,GMなし

Abstract

[0.3] Answering the call of social justice movements, in particular Black Lives Matter marches, to critically appraise power structures that shape how we live, role-playing game designers, both in live-action role-playing (larp) and tabletop, have responded by casting a critical lens on the narrative systems that shape how we play. Just as these movements have challenged enduring inequalities that limit the realization of minority members’ agency in the public domain, many new games insist that it is not merely troubling content that may give people pause from engaging in the role-playing hobby. Rather, many of these games reconsider the structure of conventional play itself, in which one individual holds asymmetrical power to influence the narrative, echoing other asymmetrical (and even unjust) hierarchies at large in society. These games demonstrate that this central figure is not necessary for evocative play and a group’s imaginative capabilities. Games without a Game Master, “GMless” games, often aim to expand avenues of creative input and liberate a table from the aegis of a single member’s directorial aesthetics. This essay claims that social justice movements have had an influence on the outpouring of GMless game designs in the last half-decade. Further, this essay identifies several conventional responsibilities associated with the role of the Game Master, illustrating how a variety of published GMless designs in both, larps and TRPGs, reimagine, remix, and reincorporate these responsibilities, making possible more egalitarian and – for many – more welcoming roleplaying experiences.

[0.4] Keywords: Liberation, Anarchism, GMless

1. はじめに

[1.1] この10年間,ゲーム設計者は,すべての参加者がプレイの流れに対して平等な発言権を持つようなゲームの仕組みを試行錯誤してきた.新しいツールやコンセプトによって,カジノのディーラーのようにプレイを調整・促進する中央審判が不要になっただけでなく,「ブラック・ライブズ・マター」(黒人の命は重要)のような社会運動が,ゲームのデザイナーにより平等主義的な仕組みを取り入れるよう促した.

[1.2] このようなシステムデザインの変化について,読者が考えるための2つの視点を提供する.第一部では,分散型の物語モデルを持つ新しいゲームの氾濫を促した社会運動について簡単に説明する.第二部では,ゲームマスター(GM)と呼ばれる中央審判のいないゲームが,1他のプレイヤーやゲームテキストにまで責任を分散させる,より民主的なモデルにおいて,彼らが果たすべきとされる従来の責任を適応させる技術や仕組みを概観する.

2. GMなしゲーム設計の政治的背景

[2.1] 2017年,バージニア州シャーロッツヴィルで白人民族主義者のデモ行進が行われ,騒動に巻き込まれた女性が死に至った.当時の白人主義者たちは,南軍の将軍ロバート・E・リーとストーンウォール・ジャクソンの銅像の撤去案に抗議していた.この二人の人物はホワイトパワーの象徴であり,アメリカの南北戦争が終わる前の奴隷の持ち主である.2017年の「ユナイト・ザ・ライト」集会の中心にあったこれらの人種差別的憎悪の象徴は,一人の犠牲を伴った中,ついに倒された.

[2.2] 集会の翌年の2018年,2名の独立系「インディーズ」ゲーム・デザイナー,Avery AlderとBenjamin Rosenbaumは,デュエット・ゲーム集『Dream Askew / Dream Apart』を開発した (Alder, Rosenbaum 2019).この影響力のあるシステムを発表した彼らは,他のプレイヤーに対して力を持つ役割(GM)の存在に重点を置かないことに成功したのだ.彼らはこのシステムを,まさに 「No Dice, No Masters」(サイコロなし,支配者なし)」と名付けた.『Dream Askew』は,プレイヤーが文明崩壊の中で生き残るLGBTQとなって,飛び地を舞台にプレイするゲームである.『Dream Apart』は19世紀東欧のファンタジー版で,理想化されたユダヤ人のシュテットル(ユダヤ人が住んでいた東欧の街.イディッシュ語で「小さな町」)についてのゲームである (Alder, Rosenbaum 2019, 139)

[2.3] これらは,決して最初のGMなしゲームでもなければ,最初のダイスなしゲームでもない.2 とはいえ,それにしても彼らは,そのメカニカルルールとゲームテキストにおいて,革新主義的であり,かつ喚起的でもある.彼らはゲームに対する新しい平等主義的な視点を提示していたのである.両ゲームが掲載された書籍の中で,デザイナーは,「No Dice, No Masters」のゲームでは,サイコロによるランダムな偶然性とGMの仲介を排除し,「プレイヤーが行う選択によってプレイが進められる」ことを強調している.そして,すべての選択はプレイヤーによってなされるため,プレイヤーはプレイ体験に熱狂的に同意し,物語の形に力を与える立場にあるのだ.

[2.4] この10年,「ブラック・ライブズ・マター」や「#MeToo」といった社会正義運動の高まりと並行して,多くのデザイナーが自らの作品の政治的側面に強い関心を寄せてきた.「No Dice, No Masters」システムを共同制作したAvery Alderは,こうした思考様式の部外者ではない.彼女は2019年に以下のような文章を書き,自分のコミュニティーの多くのデザイナーが,実際に世の中に良い影響を与える作品を作っていると暗に主張している.彼女は,インディ(組織に属さずにゲームを出版する人)のロールプレイングゲーム(RPG)コミュニティ,少なくともtwitter上の言説に関わる人々は,しばしば社会正義に関心を持っていると次のように述べている.

[2.5] 「RPGコミュニティ」について語るとき,少し深呼吸をして,RPGコミュニティはたくさんあることを思い出すといいと思う.通常は,「ある種のゲームと社会正義の問題を中心とした,インディーズRPGデザインのTwitter言論コミュニティ」という意味だ(Alder 2019)

[2.6] Alderは自身のブログで,彼女にとってロールプレイングゲームは「経験を生み出すもの」だと書いている(2009).私たちが経験したことのないような体験を,ゲームによって,私たちのパラダイムを再文脈化し,新しい視点で物事を見ることに挑戦することができる.ロールプレイングゲームは,他の方法では得られないようなユニークな体験を可能にするというのが,彼女の考え方だ.他人の視点を理解し,追体験することに長けていることがロールプレイングの核心であるというこの視点は,一人のプレイヤーが何人もの脇役に声を当てたり,物語の結果を不平等にコントロールしたりする従来の関係性を排除したゲームが数多く発表されていることを考えるとき,適切な指摘であると言える.

[2.7] 「No Dice, No Masters」が採用された両ゲームとも,ゲームテキストによれば,「社会から疎外された人々が,不安定なコミュニティで共同生活を送っている」ことがテーマとなっている.ゲームは,私たちの生活世界における周縁化された人々のグループの闘争を自意識的に反映しており,そのゲーム構造の変化を通じて,現実世界においても,人々を服従させる抑圧的な法的・規律的構造を批判的に打破するためのアクションを促すのだ.

[2.8] この論考では,こうしたデザインの多くが,GMを「奴隷の主人」と人種格差を今日まで存続させる階層構造の比喩的代用とみなしていると主張している.デザイン上,このような人物に頼る必要のないゲームを作ることは,ある種の正義を追求することである.この正義とは,テーブルの上にいるすべてのプレイヤーがより物語をコントロールできるようにするものであり,映画のような効果を目指すのではなく,むしろ感覚と経験に焦点を当てた,非線形でよりオープンなプレイ様式を招き入れるものである.

[2.9] 多くのGMなしゲームモデルと同様に,「No Dice, No Masters」ゲームは意識的な「探求,そして実験」である.多くの議論と好奇心から始まり,そこから発展していくのだ (Alder, Rosenbaum 2019, 8).これらのゲームは単なるルールの集合ではない.テキストを通じてリズミカルに配置されているのは,GMがプレイヤーに投げかける伝統的な質問「あなたは何をするか」だが,これらのゲームにおいて重要なのは,「会話」「探検」「実験」という形での反映が,アクションベースのプレイ文化やゲームにありがちな周辺部ではなく,経験の中心であることだ.

[2.10] Avery Alder氏とBenjamin Rosenbaum氏のゲームには,いずれも題名に「Dream」(夢)という単語が含まれているが,それはプレイヤーが実際にそうすることを推奨しているからである.一般的なロールプレイングゲームでは,プレイヤー同士が心を通わせ,物語のイメージを共有することは不可能とされているが,このゲームでは,プレイヤー同士が「ぼんやり夢を見る」こと,また声を出して複数の可能性を想像しながら,その中から最適な方法を選択することで物語にアプローチすることが求められている.従来は,GMがプレイヤーの行動に対して筋書きや結果を提示することが多かったが,このゲームでは,プレイヤー同士が一緒にそれを行うよう促され,明確でオープンなゲームテキストを媒介として,プレイヤーは知的な力を与えられ,ゲームの発展に積極的に関わる責任さえ与えられているのだ.

[2.11] 「No Dice, No Masters」という宣言は,革命的な歴史を意識的に受け継いだ新しい遊びの手順であり,3 マスターの制限や「できない」4 を拒否して「できる」と言う,心の劇場を舞台にしたゲームに内在する約束に応え,身体や条件の物理的制限から解放されて,プレイヤーが想像できることなら何にでもなれるように誘う,革命的宣言なのだ.

3. GMの役割を分解してみる

[3.1] GMレスのデザインフレームワークは、たとえ非政治的なゲームや現在の活動家運動の台頭以前に作られたものであっても,GMが従来担ってきた役割を独創的な方法で再解釈しているのです.まずゲームマスターの役割を定義して,これらのゲームが何を脱構築しているのかについて共通の理解を得ることにしよう.  

[3.2] プレイヤーが心の劇場でキャラクターとして演じるTRPG・LARPでは,GMという人物は,プレイヤーが楽しい時間を過ごせるようにする役割を一手に担ってきた.少なくとも,これは歴史的な見解だ.伝統的な考え方では,GMが物語をコントロールするのは,物語を盛り上げるためであり,キャラクターの行動に対する物語の反応を考えるという精神的負担を負うことで,プレイヤーが「自分らしく」考えることに集中し,プレイする物語に没頭できるようなエネルギーを持てるようになるからと考えられる.GMありのゲームにおいて,GMはストーリーに対して一義的な判断を下すことが多く,時間が流されたり巻き戻されたりすることはあまりない.TRPGの場合はテーブルで,LARPの場合はフィールドで,このスタイルは高解像度で映画のようなプレイを可能にする可能性があり,「フロー」の楽しい状態をもたらし,本当にキャラクターになりきっているように感じられる.これは,ロールプレイの「最高峰」であると言われている.

[3.3] 「フローとは,自分の行動をコントロールできているという感覚を通じて,深い楽しみを与えてくれる状態をさす.Csikszentmihalyiによると,最高の瞬間は,人が困難で価値のある何かを達成しようと自発的に努力し,身体や心が限界まで引き伸ばされたときに起こるという.最適な経験とは,それ自体が目的であり,行う行為そのものが報酬となるのだ.これは,LARP体験の最高の状態を正確に表現している (Hopeametsä 2008, 190)

[3.4] この没入感を提供するために,GMはしばしば次のような役割を担ってきた.プレイヤーに物語や文脈の認識負荷を与えず,自分のキャラクターがどう行動するかに専念できるようにするためだ.これらの役割を,GMなしのゲームは再考するのである.GMが担当する従来の役割の一部を列挙する.

  1. テンポの保持(ペース)
  2. トーン(雰囲気)の設定と維持
  3. ゲームのルールの説明
  4. 結果やストーリーの流れを調整する
  5. ロールプレイングとはどういうものかの説明
  6. ルールや物語の結果について最終的な判断
  7. プレイスペースを提供し,快適な環境を用意する
  8. 設定上存在する様々な脇役の声を担当する
  9. 舞台のイメージを鮮明にし,場の雰囲気を盛り上げる

[3.5] 熟練したGMは,その場に合った状況を提示し,プレイヤーの選択に反応し,物語の筋を論理的に進めることができる.このように,ゲームではプレイヤーとGMの間で,テニスコートの選手のようなギブ&テイクが行われ,プレイヤーはプレイヤー同士でプレイする力を持ち,臨場感を味わうことができるのだ.この論考の第3部では,異なるGMなしのデザインがそれぞれの責任に対し,どのようにアプローチし,再構成するかの例を詳しく説明する.まずはなぜデザイナーがこの長年のプレイモデルを崩したいと感じるのか,考えてみよう.

[3.6] さて,これまでGMが担ってきた責任の数々は,多くのプレイヤーにとって,その役割としてのゲーム運営を何かと重荷なものにしてきた.プレイヤーキャラクターはただ遊ぶだけだけれども,GMは物語や演出,教育など様々な能力を駆使している (Francis 2022).そのため,非対称的な疲れを感じることがある.この問題に対処するため,多くのゲームではGMのサポートが充実している.GMなしゲームでは,さらに一歩進んで,GMの責任を分解し,以下のような興味深い方法でテーブルに分散させる.

4. テンポの保持(ペース)

[4.1] 伝統的にGMは,ゲームセッションが円滑に進行するよう,また,プレイヤーがテーブルについている実際の制限時間内に,退屈させないペースでイベントが続くようにするのが仕事である.田村光信氏 (木場, 田村 2021)の『2999年布教の旅』という遠い未来の宗教的改宗をテーマにしたLARPでは,GMは主に論理的なポイントでシーンを切り,プレイの開始と終了のペースを保つ役割を担っている.しかし,GMはアクションそのものには直接関与せず,プレイヤーが次に何をすべきか迷ったときに会話を促すために存在する.ただ,アクションの進行役をするだけだ.

[4.2] ここで,ゲームデザイナーやゲームランナーの中には,「GM」と「ファシリテーター」の違いを指摘する人がいる.ファシリテーターはプレイを円滑に進めるために存在するが,GMは積極的に参加するという意味合いがある.もちろん,両者の意味は重なる部分も多いのだが,英語圏のロールプレイングゲーム界では,1)従来の「マスター」のような階層的な意味合いではなく,2)プレイヤー以外の積極的な演出家の存在を必要としないゲームでも使用できることから,ファシリテーターという言葉を受け入れている人もいるようだ.また,「ホスト」という言葉もある.これは,単にその場を主催し,プレイスペースを用意し,ルールを読んだだけで,必ずしもルールを熟知しているとは限らない人物を指す.

[4.3] GMなしのゲームでは,テンポよく進めるために,さまざまな形のタイマーが使われている.Alex Roberts氏(2019)による最大6人用のカードベースのストーリー構築ゲーム『For the Queen』(「女王のために」)は,愛と危機の物語を展開し,登場人物たちは最終的に女王を守るか,ここを守るかの選択を迫られる.これはカードの山を使い,カードは物語のプロンプトで,ラウンドで引かれる.あるカードが出るとゲームは終了する.他のゲーム,『Ma Nishtana』では(Rabinowitz, Bisogno 2022),伝統的なユダヤ教のハガダをモデルにしたストーリーテリングゲームで,プレイヤーはヘブライ語の出エジプトの物語を語り,参加者は交代で1ページずつ読み,それぞれが別のシーンに関連付けられる.リニアテキスト全体のいくつかのページは,食事,歌,あるいは本に含まれるエッセイを読むなどのオプションのアクションで,休憩するように明確に促している.『Alice Is Missing』(「アリスさんは行方不明」)は,Spencer Stark (2020)による高校3年生のアリス・ブライアーウッドというキャラクターの失踪を描いたサイレント・ロールプレイングゲーム(沈黙RPG)である.このゲームでは,プレイヤーはテキストのみで会話し,サウンドトラックの時間に合わせて,サウンドトラックが終わると,ゲームも終了する.

5. テーブルのトーン(雰囲気)を設定し,維持する

[5.1] GMが伝統的に担っているロールプレイの第二の特徴は,参加者がテーブルでどのようなプレイ体験を期待しているか,全員が同じ考えを持っていることを確認し,それを提供することだ.GMの有無に関わらず,これを処理する方法はたくさんある.まず,ゲームテキスト,画像,レイアウトは,ゲームの内容を伝えるのに大きな役割を果たす.Jay Dragon氏(2021)による,旅する動物の民を描いた牧歌的なファンタジーRPG『Wanderhome』は,その設定(暴力表現がもはや存在しない)の物語性を強調するために,動物の民が日常生活を送る様子を2ページの見開きにしたアートブックとしてデザインされている.

[5.2] Hakan Seyalıoğlu氏とKathryn Hymes氏(2018)による『Dialect』(ダイアレクト)は,プレイヤーがテーブルで一緒に作った言語の発展を体験し,最終的にフィクションの中でその言語が死ぬのを目撃するゲームである.Jason Morningstar氏(2009)による『Fiasco』は,『Fargo』(1996)などの映画を模した,悲惨に失敗した小悪党の映画の物語を楽しむゲームで,興味深い方法でトーンを設定している.どちらも,テーブルのすべてのプレイヤーがグループ単位で選択できるプレイセットが用意されており,特定のテーマやモチーフをプレイヤーの興味に応じて選択できるようになっている.

[5.3] John Stavropoulos氏(2013)によって作られた『X-Card』という道具は,ゲームテーブルの誰もが,何らかの理由でプレイヤーの心に響かないものがあった場合に,そのプレイセッションの物語コンテンツを編集する権限を与える安全ツールである.5 例えば,あるプレイヤーが現実的な設定にエイリアンを登場させた場合,Xカードを使ってプレイのトーンを調整することができる.

[5.4] 『Fiasco』では,著者のJason Morningstarはゲームのくだけたトーンを強調するために,まえがきに次のように書いている.「おい,おまえ.このゲームはな,あの映画みたいなやり口で書いてあるんだ.汚えワードやイカれたアクションや,ヤバい表現がいくらでも出てくるだろうよ.だがな,そんな小せえ事を気にするやつはこの先一切お断りだぜ」(Morningstar 2009, 11)

6. ゲームのルールを教える

[6.1] これまでのGMは,プレイの過程で着実にルールを教え,関連する状況が発生したときにそれを明らかにするのが常だった.このような断片的な教え方は,プレイヤーが新しいゲームに取り組む際の精神的な負担を軽減するのに有効だ.一方でGMなしのゲームでは,一人のプレイヤーがルールを読んで教えたり,「スライドショー」のように声に出して読んだりすることがよくある.これらのルールの中には,明確なメカニックを伴うものもあれば,色彩的な意味を持つものもある.Mark Diaz Truman氏とAvery Alder氏(2014)による『In The Deep Forest』(奥深い森)は,「ポスト植民地時代の奇妙なファンタジー」についてのマップ作成ゲームで,プレイヤーはモンスターのグループ全体の視点を体現する役割を担っている.テキストは,ほとんど劇のように,音読している人に,テーブルの上のさまざまな物や場所を指差して,それが何であるかを記述するように求める.

[6.2] Alex Roberts氏(2019)による『For the Queen』(女王のために)では,上記の忠誠と裏切りの悲劇的なゲームだが,プレイヤーは交代で,1から19までの山札に書かれたルールを音読する.『マ・ニシュタナ』では(Rabinowitz, Bisogno 2022),儀式や迫害からの脱出,また事件の中心で張り巡らされる家族の絆について,登場人物が演じることになる物語の枠組みを印象づけるために,まずプレーヤーが交代で原作の物語を一括して読み上げるのである.これらは明確なルールではないが,暗黙のルールだ.朗読の後,テキストはプレイヤーに次のように声を出して読んでもらい,キャラクターが演じるべき物語の範囲を強調する.「儀式の関連性,非対称の権力構造への恐怖,自分の家を探すことを考えなさい.これらのテーマは,私たちの物語でも,この物語が語られるたびにそうであったように,真実であろう」.このように,トーンの限界を強調し,特定の核となるテーマを盛り込むことを要求することで,ゲームの本質的な物語要素を教え,プレイヤーの頭の中を枠で囲む役割を果たしている.

7. キャラクターの行動に応じた結果を提供する

[7.1] GMが伝統的に担ってきたもう一つの役割は,キャラクターが行う選択に反応することだ.キャラクターが無謀で愚かな行動を取った場合,GMは(キャラクターはともかくプレイヤーにとって)適切かつ満足のいく対応をするのが伝統的な役割だった(Francis 2022).例えば『Ironsworn』(鉄に誓った, Tomkin 2018) は,プレイヤーがヒーローとして危険なクエストに挑み,ダークファンタジーの世界で自分の道を切り開いていくゲームだ.このゲームのデザイナーであるShawn Tomkin氏は,プレイヤーは何かの結果が疑問であったり不明瞭であったりする場合,その結果を決定するために一連の”託宣”を使用すると書いている.託宣とは,『Ironsworn』のルールブックに付属の表を用いたランダム化装置であり,プレイヤーが予想外の事態に身を任せたいと思ったときに,起こりうる事態の幅を広げる手助けをするものである.託宣はタロットデッキのようなランダム装置であり,プレイヤーは引かれたもののテーマに基づいて状況を解釈することができる.

[7.2] Alex Roberts氏(2019)による『StarCrossed』(縁起でもない星々)は,登場人物が「本当は一緒になりたい」けど「本当はなれない」禁断の愛についてのゲームである.このゲームでは,プレイヤーは,転がるブロックでできた不安定な塔(ジェンガのようなもの)を使い,キャラクター同士が惹かれ合うたびに,自分のキャラクターが他のキャラクターに体を触らせたり,個人的なことを打ち明けたりする (Roberts 2019, 8).これらのアクションの結果,タワーが倒れるとストーリーは終了し,プレイヤーはゲームのエピローグ部分へと進む.『Ironsworn』と『StarCrossed』のどちらもが,キャラクターの行動に対する結果をランダムにする手段として,物理的なアクション(サイコロを振る,またはブロックの塔に触れる)を提供する.

8. ロールプレイングの内容を口頭で伝える

[8.1] 『Yazeba’s Bed and Breakfast』は,Possum Creek Gamesのさまざまなデザイナーによるゲーム(Acosta, Dragon, Veselak 2022)で,章立てで書かれており,それぞれに独自のルールが設定されている.プレイヤーは,魔女のホステルや旅館の客や住人としてプレイする.ゲームテキストは,本の中の配役である悪魔の子の声で書かれており,ズルをしてもいいし,ルールを深刻に考えすぎないようにと示唆している.「ルールなんてどれも同じ.この本に書いてあるルールだって,寝る時間やカレンダーと同じ.自分が幸せなら無視すればいいんだ」(Acosta, Dragon, Veselak 2022, 10)

[8.2] Avery Alder氏とBenjamin Rosenbaum氏による『No Dice, No Masters』形式のGMなしプレイを広めたゲーム,『Dream Askew』(ゆがんだ夢)と『Dream Apart』(バラバラの夢)は,デュエット本の装丁の一節全体をGMなしプレイへの「移行時のトラブルシューティング」に割いている.ゲームの主催者に,より触感の良い,あるいは旧来のダイスロールゲームで行われたいくつかの「本能とテクニック」を学び直し,「他のものを育てる」よう求めている(Alder, Rosenbaum 2019, 174).これらは,プレイに参加する人に,「他のプレイヤーに任せる」「ゆっくりやる」「用意された物語のように,すぐに紛争や冒険に突入することを期待しない」ことを明確に求める助言である.彼らはプレイヤーに,“グループとしての無為な夢想”と “好奇心に従う”ためのスペースを作るように求めている.これらのゲームは,自分たちがプレイするテーブルにどのような雰囲気を求めるかについて非常に意識的であり,プレイヤーに明示的にロールプレイの方法を教えることを目的としている.これは,従来のGMが,複数のゲームをプレイする過程で学んだロールプレイの意味について,収集された感覚を示し,自らが真実の軌跡として示されるのとは対照的である.GM不在のゲームでは,どのプレイヤーも特権的な立場にはない.誰も秘密の知識を持っておらず,たとえ趣味の初心者であろうと,すべてのプレイヤーが参加できるように工夫されている.

9. ストーリーの脈動を作る

[9.1] Catherine Ramen氏(Ramen, Ochoa 2018)による『Red Carnations on a Black Grave』(黒の墓の赤いカーネーション)は,パリ・コミューン(1871年3月から5月までパリを支配した,史上初の社会主義政権)の運命的な出来事に巻き込まれた労働者階級の人々の人生と悲劇を描いたゲームだ.このゲームでは,デザイナーは,人間関係を定義するのに役立つ質問と,「インスピレーション・カード」と呼ばれるシーンのセリフが書かれたカードの山を使う.これらのカードは,デザイナー自身の言葉で,当時のパリ・コミューンによって作られた「実際のポスターに90%基づいて」作られたものだ (Jágr Sheldon 2019).このカードには,歴史的な出来事や状況,感覚的な印象などが書かれており,アクションが途切れた時にプレイを促し,ストーリーに緊張感を与える役割を担っている.

[9.2] 『Paranormal Inc.』(『パラノーマルインク』)は,『ゴーストバスターズ』(1984)を模しており,幽霊にまつわる謎を解き,その過程でキャラクター個人の幽霊と対峙するゲームだ(Furness 2021).このゲームでは,謎から導き出される真実は設定されていない.プレイヤーはゲーム中に架空の手がかりを集め,物語の中で何が実際に起こっているのか,仮説を立て合意形成しながら推理していく.その後,プレイヤーは目標とする「複雑さ」の数値に対してサイコロを振る.集めた「手がかり」の数によって,この数字を達成する可能性,あるいは超える可能性が高まる.成功すれば,そのプレイヤーの推理は正しい.成功すれば正解,失敗すれば不正解となり,さらに手がかりを探し,すべてのデータを取り込んで別の理論を構築することになる.このシステムは,GMありの『Brindlewood Bay』(ブリンドルウッド湾)(Cordova 2020)というゲームに由来している.どちらのゲームでも,ナレーションの結果はあらかじめ決まっているのではなく,プレイを通じて発見されるため,より高い臨場感が得られる.

[9.3] Wendy Gorman氏, David Hertz氏, Heather Silsbee氏(2014)によるGMなしのLARP『Still Life』(静物)では,プレイヤーは岩のように振る舞い,存在特有の不安定さと個人のコントロール外の力によって変化することに思いをめぐらせる.ゲーム開始時,ほとんどのプレイヤーは石に扮し,1つのスタートポジションを取る.もう一人のプレイヤー,世界のエレメンタルフォース(自然の力)を代表する進行役がプレイヤーを移動させ,やがて入れ替わることもあり,進行役とプレイヤーの役割が交互に入れ替わる.進行役は他のキャラクターを移動させるたびに,そのキャラクターの熟考の仕方と認知的な位置づけを,新しい物理的な位置づけに変更することができる.これは,非常に物理的な方法で,物語の区切りを示すものだ.

10. プレイする場所を主催し,快適な環境を作る

[10.1] Ron Edwards氏(2001)が『Sorcerer』(魔術師)というTRPGのために開発した『Lines and Veils』やBrie Beau Sheldon氏(Jágr Sheldon [2013] 2021)がデザインしたほぼすべてのゲームに使用できる『Script Change』などの安全ツールも,プレイ中にテーブル内のトーンを調整しゲーム内容をナビゲートするのに役立つように設計されている.「Lines and Veils」は,プレイ前,あるいはプレイ中に,特定のゲームに登場する可能性のある微妙なテーマや題材のリストをマークしておく手順だ.例えばホラーゲームでは「性的恐怖」というように,プレイヤーは避けたいテーマを排除することができる.これは,そのテーマをテーブル上に登場させず,言及もしないという意味だ.「スクリプト・チェンジ」は,物語の流れを管理する方法だ.テレビのリモコンに早送りや巻き戻しがあるように,この一連のツールは,プレイヤーがロールプレイされた物語を巻き戻し,満足できない場合は作成された伝承を変更することを明確に許可している.あるゲームが大人向けであることを明示するのと,親密な内容なしに子供向けであることを明示するのでは,期待感が違っている.

[10.2] Rae Nedjadi氏(2021)による『Cozy Town』(こじんまりとした街)は,知覚を持つ動物の住人が平均的な日常生活を送る小さな町の四季を通じて遊ぶゲームであり,プレイヤーは「人々や彼らがいるコミュニティが安全で居心地がいいと感じる」理由を探る機会を与えられる.ゲームの冒頭で「お茶とお菓子を用意することを強くおすすめします!」と宣言している.お茶やお菓子を出すと,柔らかくて暖かくて幸せな気持ちになれますよ」と,ゲームの冒頭に書かれている.実際にお菓子や温かい気持ちを提供することで,プレイヤーは「素敵なコミュニティとその甘い住人を作る」「みんなが楽しい時間を過ごせるようにする」という明確なプレイヤーの目的を達成することができるのだ(Nedjadi 2021, 2–3)

11. 設定上存在する様々な脇役の声を担当する

[11.1] 前述の『The Deep Forest』(奥深い森)では,ゲーム内の1年間におけるコミュニティの変化を,プレイヤーが俯瞰的に見ることができる.プレイヤーは順番に標準的なトランプを引き,それぞれが一組のセリフに対応する.

[11.2] このゲームでは,「プレイヤーはコミュニティの様々なモンスターとして発言し,彼らのために行動するよう求められ,どのモンスターとして発言または行動しているかが表示される.この文章では,「モンスター」は1匹のモンスターでも,一緒に暮らす小さなモンスターの群れでもかまわない.私たちは,どの視点も誰か一人だけに属していると感じるべきではなく,ゲーム中,異なるモンスターとして話すよう誘われているのだ」 (Truman, Alder 2014, 6)

[11.3] ジャーナリングゲーム(日記系のゲーム)の中には,具現化されるGMとは対照的に,ゲームテキストそのものがゲームの正式なガイドとして機能するものがある.Tim Hutchins氏(2019)の『1000 Year Old Vampire』(1000歳の吸血鬼)は,記憶喪失と永遠に近い吸血鬼の存在についてのゲームである.また,「暗闇箱」(野町 2021)は,プレイヤーのキャラクターが,霊があの世に行くのを助けるゲームである.これらのゲームでは,プレイヤーは,歌詞,詩,手紙,簡単な会話など,書かれた言葉を通して,他のキャラクターを表現することができる.

12. 舞台のイメージを鮮明にし,場所の感覚を提供する

[12.1] 伝統的には,特にTRPGや,心の劇場で行われるゲームでは,キャラクターが存在する物理的な文脈がすぐには分からないため,GMは空間の感覚を提供する仕事を担っている.この点をエレガントに解決するメカニックを持つゲームとして,次の2つがある.実際にはGMなしのゲームではないのだが,Jason Cordova氏(2021)によるヴィクトリア朝イングランドのモンスターハンターゲーム,『The Between』(間)は,ある種の責任をプレイヤーに委ねている.具体的には,「Paint the Scene」(場面を描写する)と呼ばれる手法で,ゲームのシナリオにGMのテクニックを書き込んでいるのだ.これは,プレイヤーがある場所に到着すると,その場所についてのアイデアを探る質問をされる,というものだ.例えば,あるシナリオでは,プレイヤーがアヘン窟に入るシーンがある.このとき,GM(ゲーム内では「キーパー」と呼ばれる)ではなく,すべてのプレイヤーに次のようなプロンプトが提示され,それに答えることになる.“情景を描く”.例:ジェニー・ジョンストンの店には,様々な人々が常連客として訪れる.そのことを示すものは何ですか?” このように,単に「いろいろな常連客の名前を挙げてください」という質問ではなく,「ここではすべての人が歓迎されている」ということを強調し,シーンに関するアイデアを探る質問を用意することで,プレイヤーそれぞれの心象風景を融合し,ゲームの現実を共有しながら想像するというロールプレイングゲームの従来の問題をより忠実に実現することができるのだ.

[12.2] 前述の『Wanderhome』』(家まで彷徨う)は,『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』(アダムス 1975a; アダムス 1975b)や『レッドウォール』(ジェイクス 1999)のように,キャラクターが新しい場所や舞台を旅するようなフィクションを模してデザインされたものである.このゲームは,作者によって『GM不可知論』であると説明されている.『Wanderhome』は『The Between』とは異なるアプローチで設定を行う.『Wanderhome』では,選択肢リストがイメージを喚起するものとなっており,プレイヤーはその中からグループ単位で選択する.キャラクターは新しい土地に到着するたびに,3つの「自然」から断片を取り込んで新しい場所を作り上げる.プレイヤーは,農場「やんちゃ坊主・愉快犯」の美的要素と,塔「危険を知らせる光」の美的要素と,迷宮「もつれ道」の美的要素を組み合わせて,全く独自の舞台を構築することができる.

13. 結論

[13.1] RPGにおけるGMなしのデザインは,TRPGでもLARP上でも,今後も続くだろう.この論考では,2010年代に登場したGMなしのゲームの背景をいくつか紹介した.そのほとんどは,マルチプレイヤーゲームであるTRPGである.しかしGMなしのロールプレイは幅広く,LARPであろうと日記形式のロールプレイであろうと,このメディアのあらゆる領域を包含しているのである.

[13.2] おそらく,GMなしプレイが広く浸透しているのは,その原始的な性質によるものだろう.参加者が「鬼」となって追いかけっこをしたり,家族で「警察と泥棒」や「家」ごっこをしたりと,メカニックなシステムではなく,一時的に採られた人間関係のシステムによってゲームが進行する.それは創造的な頭の空間へ戻ることなのである.これは,GMなしゲームの大半がルールなしであるということではない.むしろGMなしゲームは,理論的には誰もが想像力を等しく持ち,誰もが遊びを楽しむために積極的に参加する必要がある.それはかつて私たちが持っていたかもしれない,ある種の平等主義を取り戻すということなのだ.

[13.3] GMなしで遊ぶことは,GMありのゲームと対立するものではない.この記事で紹介したゲームの中には,それぞれの要素が混在しているものも少なくない.例えば,「Wanderhome」はGMに依存しないし,「Still Life」はGMが交代で参加する.「The Between」はGMが参加者に物語の記述を放棄することを明確に求めている.これらの新しい物語の枠組みは,ゲームがどうあるべきかを考えるきっかけになる.ゲームの進行役,デザイナー,プレイヤーは,これらの新しいデザインを意識しておくとよいだろう.これらは遊びの可能性を広げるものであり,うまく使えば,個々のプロジェクトを強化するのではなく,ロールプレイングゲームを楽しむ人の幅をさらに広げるのに有益な道具箱となるかもしれない.

注記

  1. このエッセイでは,以下の用語のいくつかを互換的に使用することがある.ただし,これらの用語はゲームテキストによって微妙に異なる意味を持つことを念頭に置き,適切な場合にはその旨を明記する.

    ・ ゲームマスター(GM)/中央審判/進行役/ホスト/ガイド
    ・ GM付きプレイ/進行役つきプレイ/GMed
    ・ GMなしプレイ/進行役なしプレイ↩︎

  2. この著者が知っている最古のGMレスゲームは,Ralph MazzaとMike Holmesの『Universalis』 (2002)とJames Wallisの『The Extraordinary Adventures of Baron Munchausen』(1998) である.↩︎

  3. 「No Gods, No Masters」は,権力構造の破壊と万人の平等を強調した歴史的なアナキズムや労働者権利運動のスローガンである.この言葉は,1912年のローレンス繊維ストライキで世界産業労組が配布したパンフレットが英語での語源となっている.しかし,もともとこの表現は,フランスのスローガン “Ni dieu ni maître!“ (このスローガンは,1880年に社会主義者でパリ・コミューンの議長を務めたこともあるルイ・オーギュスト・ブランキによって作られた新造語である (Jahsonic 2020; Sangdeboeuf, Czar, et al. 2022)↩︎

  4. “師匠(”school master”)が教える最初のレッスンは,いつも「できない」という言葉をどう言うかだ” エリック・スタイン(Stein 2021, 7)はジャック・ランシエールの言葉を引用して書いている(Rancière 1991)↩︎

  5. The Gauntlet (2017) も参照し,使用できる実用的なカードについては,Karen Twelves の 『安全確保 &キャリブレーションカード』 (2018; 2020) も参照してください.↩︎

参考文献

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映画・小説

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ゲーム目録

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