CLOSS. 2021. “Online Larps in Japan.” Japanese Journal of Analog Role-Playing Game Studies, 2: 56e-58e.
引用方法:CLOSS. 2021. 「日本のオンラインLARPについて」『RPG学研究』2号: 56j-58j.
DOI: 10.14989/jarps_2_56j[0.1] このショートノートでは,2019年以降に日本のLARP団体が主催したオンラインLARPとウェブLARPの概要を簡潔にまとめている.特にパンデミックの時から,日本の多くのLARPプレイヤーがオンライン形式の実験を行った.
[0.2] キーワード:オンラインLARP,日本
[0.3] This short note provides a brief, abridged overview of online larps and web-larps organized by Japanese larp organizations since 2019. Especially during the pandemic, many larpers in Japan experimented with online formats.
[0.4] Keywords: Japan, online larp
[1.1] 主催期間:2019年5月
[1.2] ツイッターというSNSを利用して,オンライン上でのLARPをできるのではないかという考えのもと,#WEBLARP というハッシュタグを発言に用いることで,文明崩壊後の空気が汚染されたシェルター内で「文字情報だけでしかやり取りのできない人々」という設定を用いることで,「ツイッターというツールで,LARPに参加するという参加者の環境」を「世界観」とリンクさせるという重要な要素を上手に取り込んだ作品である.
[1.3] この作品を愛したユーザーらが自らを「しぇるたー民」というようになるなど,熱烈なファンを生み出した.
[1.4] しかしながら,SNSという公共の場をゲームに用いるといった事や,ユーザー間での無用なトラブルが起こった場合への・・・幸いにも起こることはなかったが.そうしたことへの懸念から,SNS上でのハッシュタグを使ったこうした取り組みは,縮小されることになっていった.
[1.5] しかし,オンラインのサービスを活用したLARPの取り組みとして,素晴らしい発想の元,日本におけるオンラインLARPの可能性を生み出す一つの契機となる現象であったと感じている.
[2.1] 主催期間:2019年9月
[2.2] シンプルなルールで,ドラマチックなロールプレイシーンを会話や身体的表現を用いて演出するLARPのルールとして開発され,その特徴として「どんな場所でもできる事」をコンセプトとしていた事から,オンラインで気軽に集まってプレイを出来る!として,ビデオチャットツールや音声通話ツールを活用してLARPが行われた事例として,欠かすことが出来ないのが,この「散華」と言える.散華は,一昨年のTRPGフェスでも,プレイされていましたので,オンラインではない方の物は,プレイされたことがあるかもしれない.
[2.3] 関連サイト:https://twitter.com/romanlittlewing/status/1168007191493656578?s=21(2021年11月8日取得)
[3.1] 主催期間:2020年1月〜2月
[3.2] オンラインでのLARPと,オフラインでのLARPを融合させる形で取り組まれたLARPといえる.
[3.3] WEBLARPの課題であった「開放されたSNS上で行う懸念点」に対する課題を,ユーザー登録型のオンラインチャット,SNSサービスを活用することで解決し,複数のチャット用のルームを,「場所」として表現することで,「その場所に,その時に行くことでしか体験できない,会話できない」出来事は参加者が物理的な距離を超えてキャラクターとして「場所」に集い,交流する事ができる.1 という,オンラインLARPならでの利点を十全に生かした取り組みを実現させた.
[3.4] また,そうした場所に人々が集い交流する上で,ロールプレイをするための「魅力的な世界観」を提供することで「その世界でキャラクターとして生活すること」を提供することで,LARPとしての楽しみ,ロールプレイをすることの楽しみを作り出されていた.
[3.5] また,オンライン上で,チャット上でしか対話や交流がなかった状況に対して,物語のエンディングは「実際にキャラクターとしてユーザーたちが集う」事を着地点として設定し,一つのLARP作品として作り上げた,素晴らしいコンテンツであると感じている.
[3.6] 関連サイト:https://worldendstory.memo.wiki/(2021年11月8日取得)
[4.1] 主催期間:2020年4月
[4.2] コロナ禍が鮮明に社会的な現象として日本にある中で発表された,オンラインに特化したLARPとして発表された作品となります.現在は,ウェブ上で行うRPGといった表現もされている.
[4.3] ボイスチャットやビデオチャット,テキストチャットなど,ユーザーが期待するツールを利用してコミュニケーションを取ることで,オンラインでLARPを行う上でのユーザーが抱える懸念を的確にデザインでフォローする工夫が明確に見られる.
[4.4] シンプルな基本ルールによって設計され,ゲーム用のツールはウェブサービスによって提供され,GM支援用のツールもサポートされているなど,ユーザーフレンドリーな設計がなされている素晴らしいコンテンツであると感じている.
[4.5] 関連サイト:https://shootingstar-larp.jp/archives/967(2021年11月8日取得)
[5.1] 主催期間:2020年4月
[5.2] コロナ禍の中,オンラインでLARPをやりたい!といった際に,海外ではオンラインLARPという取り組みがあるらしい.という情報をキャッチしたことがある人ならば聞いたことがある.もしくは遊んだことがあるかたもいらっしゃるのではないであろうか.
[5.3] ビデオチャット形式で行うなどのオンラインLARPを行うテクニックを海外で行われている事例として,日本のLARPユーザーに広く認識を広げた作品とも言える.
[5.4] 閉鎖的な環境にあるSF世界のキャラクターとなって,交流を行い,また決断していく.そうしたLARPとしての楽しさをこれまでリーチしていなかった人がLARPをしるきっかけを与えた作品でもあると感じている.作者さんの許可を受けて邦訳を手がけられた,HAL99さんやneijimaさんのお働きも素晴らしいことであると感じている.
[5.5] 作者:Rafael Chandler 版元:Neoplastic Press 邦訳:neijima / HAL99. Booth販売サイト:https://booth.pm/ja/items/2061718(2021年11月8日取得)
[6.1] 主催期間:2020年4月
[6.2] 元々は,一つのテーブルを囲んで行う事を目指して構想していたものであるとのことであるが,構造上オンラインでのLARPも実施できる.として,オンラインLARPとして実施されているコンテンツ.プレイヤー(キャラクター)が認識した五感(体感)をきっかけとして,ストーリーが進む構造になっているため,ビデオチャットで行われることが望ましいようである.プレイ風景はオンライン飲み会さながらの様子が見られており,時代にあわせたオンラインLARPの楽しみ方として素晴らしいコンテンツであると感じている.
[6.3] 関連サイト:https://docs.google.com/document/d/1-C0BJS9f4ga4y-CdiPXJNRq1RGf783co7a1dM6M8e1s/edit(2021年11月8日取得)
[7.1] 主催期間:2020年5月
[7.2] 私達CLOSSはオンラインでLARPをやるための取り組みについては考えた.そして,LARPとしてのあり方を様々な方が考えるオープンなリソースとして,リモート・スコープという考え方を提案させていただいた.
[7.3] オンラインでLARPを取り組む試みとして,必要な要件を考えたところ「オンラインでLARPを行う上での基本的な考え方」を「ベーシックフレーム」とし,「LARPをする際にキャラクターとして振る舞う土台になる世界観」を「スキン」とし,「LARPを行う上でのルール」を「ギアルール」とし,「特殊なシチュエーションを実現するための限定的なルール」を「ピースルール」とすることで,構造的な切り分けをしたのである.同時期に,「魔導機関レギオン」というギアルールも公表させていただいている.
[7.4] 昨年のTRPGフェスティバルにおいても,公演した.
[7.5] ツイキャスという視聴者がコメントを配信者に返すことができる双方向性のあるツールを活用して行うため不特定多数が参加可能な「配信型」のオンラインLARPとも言える.
[7.6] 関連サイト(遠隔通信LARP リモート・スコープ):http://ex.closs-larp.com/archives/273(2021年11月8日取得),関連サイト(視聴者参加型ファンタジー 魔導機関レギオン):http://ex.closs-larp.com/archives/260(2021年11月8日取得),
[8.1] 主催期間:2020年6月
[8.2] 終局世界物語を手掛けたスタッフ陣が新たに立ち上げたオンライン上でのLARPサービスになる.第1期〜第3.5期まで行われ,多くのユーザーが登録して楽しむ素晴らしいオンラインLARPコンテンツとして運営された.昨年から今年のTRPGフェスでも一つのコンテンツとして参加されているのでご存じの方も多いと思う.9月20日に全てのサービスを終了されるようであるが,素晴らしいコンテンツであったと感じている.
[8.3] 関連サイト:https://worldstory.larp.love/top.php(2021年11月8日取得)
[9.1] 主催期間:2021年5月
[9.2] 今年のTRPGフェスティバルにおいて行われた,視聴者参加型オンラインLARPといえる.LARPはYoutubeで配信され,プレイヤーキャラクターのプレイヤーは「神」として,まさに「神の視点」で配信の様子を見て,LARPとしてのギミックに関わる形式をとった.元々オンライン用ではないルールを,オンラインで可能とするためにカスタマイズして行ったLARPの例と言える.
[9.3] 関連サイト:https://the-oracle-of-laplace.playing.wiki/(2021年11月8日取得)
[10.1] 主催期間:2021年5月
[10.2] ゲームとしてのディベートをオンラインでLARPとして行おう.という,企画となる.海外でいうところのいわゆる委員会型のLARPの一つともいえるが,日本においてはネガティブなイメージが想起されることもある「議論をする」というディベートを,楽しいものにしたい.といった様子が見られ,エデュケーションLARPにも意識を向けた素晴らしいコンテンツであるように感じている.
[10.3] 関連サイト:https://twipla.jp/events/481505(2021年11月8日取得)
[11.1] 主催期間:2021年9月
[11.2] オンラインLARPとは,少し毛色が変わるように感じるかと思うが,2022年に「舞台とLARP」という新しい試みも始まる様子が見られている.舞台の様子はオンライン配信も計画されているとのことであるから,このようなコンテンツが進化していく先にも,新しい形のオンラインLARPの楽しみ方が発生していく可能性がある.大変興味深い,素晴らしい試みが始まったと,期待している.
[11.3] 関連サイト:https://note.com/himeno0627/n/n7f6559c7c867(2021年11月8日取得)
[12.1] 以上,矢継ぎ早ではあったが,2019年から2021年にかけて,日本のオンラインLARPの軌跡はこのような状況にあると観測している.私も全てのコンテンツに参加できているわけでは決してないため,説明が不足しているところが多分にあると思うが,コロナという災害に際して,様々な方が持っている地力がすばらしいコンテンツを生み出していくきっかけにもなったように思え,そうした層の厚い文化としてLARPが発展していることに大変感銘を受けているところである.
このようなプレイヤーとキャラクターの位置関係の不一致については,本号のディクソンとマーシュの論文を参照してください.↩︎