Emotional & Psychological Safety | 感情的・心理的安全性

Invited Contribution | 巻頭特別寄稿 : LARP安全デザイン入門

Johanna Koljonen | ヨハンナ コルヨネン

Participation | Design | Agency

How to Cite:

Koljonen, Johanna. 2020. "Larp Safety Design Fundamentals." Japanese Journal of Analog Role-Playing Game Studies, 1: 3e-19e.

引用方法:

コルヨネン ヨハンナ. 2020. 「LARP安全デザイン入門」『RPG学研究』1号: 3j-19j.

DOI: 10.14989/jarps_1_03j

要約

[0.1] この巻頭特別寄稿では,第一線のエクスペリエンスデザイナーのヨハンナ コルヨネン氏が,オプトイン(LARPへの参加)/オプトアウト(LARPからの離脱)の原則に焦点を当てたLARP安全デザインの基本的な考慮事項を概説している.

[0.2] OKチェックイン,タップアウト,ルックダウンという三つの特殊な安全とキャリブレーション手法の歴史と応用を説明し,それらの使用を安全デザインのためのより広いシステムに統合している.

[0.3] キーワード:キャリブレーション手法, LARP, オプトイン・オプトアウト, プレイの慣習や流儀デザイン, 安全性

Abstract

[0.4] In this invited paper, leading experience designer Johanna Koljonen outlines basic considerations for larp safety design with a focus on opt-in/opt-out principles.

[0.5] She describes the history and application of three particular safety and calibration mechanics – the OK check-in, the tap-out, and the lookdown – and integrates their use into broader systems for safety design.

[0.6] Keywords: Calibration, larp, opt-in/opt-out, play culture design, safety

編集者序文

[0.7] LARPデザイナーが安全性の問題を考えた瞬間,受賞歴のある作家,評論家,メディアアナリスト,劇作家,そしてもちろん体験デザイナーでもあるヨハンナ コルヨネンの先駆的な仕事を見逃すことはできないだろう.「Nordic Larp Talks(北欧LARPトーク)」と「Alibis for Interaction(インタラクションのためのアリバイ)」会議の共同創設者として,また数多くの記事や書籍を通して,彼女は,いわゆる「クヌデプンクト言説」,すなわち,同名のカンファレンスでのLARPと体験デザインに関する議論に貢献し,それを形作ってきた.彼女の直近の業績は,他の多くの著名なLARP作家の論文も含まれている共編著の「Larp Design」 (Koljonen et al. 2019)である.

[0.8] フィンランドで生まれたヨハンナ コルヨネンは,オックスフォード大学で英文学を学び,彼女が拠点とするスウェーデンで仕事をしてきた.LARPデザインの分野以外では,メディアアナリストとして知られ,スクリーン産業の未来やインタラクティブ(相互的)なストーリーテリングについて国際的に講演を行っている.2014年からは,ヨーテボリ映画祭の北欧映画市場のために,1毎年恒例のノストラダムスレポートを執筆している.それ以前のキャリアでは,文化評論家,コラムニスト,公共放送ラジオやテレビ向けの文化番組やドキュメンタリーを制作する制作会社を共同設立し,脚本家としてラジオドラマ,物語性のあるiPadゲーム,漫画風グラフィックノベル『Oblivion High』(Koljonen and Rüdiger 2012; Koljonen and Rüdiger 2014)などを制作してきた.2011年から2012年までスウェーデン政府の文学委員会の委員を務め,2011年にはアウグストプリセット文学賞の審査員を務めた.2011年のスウェーデン・グランド・ジャーナリズム賞(イノベーター・オブ・ザ・イヤー部門)は,彼女の多くの称賛の一つである.

[0.9] 私たち編集者が本号のテーマについて議論したとき,キャリブレーションメカニズム(調整するための手法)は感情的・心理的安全性の重要な側面の一つとして浮上した.そのようなツールのいくつかはヨハンナ コルヨネンの発案であり,現在では世界中のLARP界で広く実践されているが,地域の状況に合わせて調整されている.例えば,「ルックダウン」(下記参照)は,「ストップ」や「カット」コマンドよりも他のプレイヤーのスタイルに干渉しないため,他者に迷惑をかけないデザインに合うだろう.コルヨネン氏に,このようなキャリブレーションの手法に焦点を当てた安全デザインの紹介を本号に寄稿してもらうことにした.本稿では,ヨハンナ コルヨネンが調整を提案し,安全デザインへの体系的なアプローチにおけるそれらの位置を考察している.日本語版では,これらの技術の多くを初めて紹介しており,安全デザインについて,この日本語と英語を横断した実りある議論が始まることを願っている.

[0.10] 翻訳:カム ビョーン=オーレ,諸石 敏寛.

1. はじめに

[1.1] 本稿では,LARPにおける「安全」のためのシステム・デザインの基本について簡単に説明し,オプトイン(LARPへの参加)/オプトアウト(LARPからの離脱)の原則に基づいたシステムでよく使われるいくつかの実用的な手法を提案し分析する.以下の概念的な用語のほとんどは,LARPデザインを教えるために私自身が開発したものである.もちろん,基礎となる原則の多くは何年も何十年も使われてきたものであり,多くのいわゆる体験型コンテンツデザイナーが直感的によく理解している.

[1.2] しかし,ここ数年の間に,新しいデザイナーのための思考ツールとして,また,プレイカルチャー(慣習や流儀),分野を超えてこれらの問題についての会話ができるようにするために,これらの概念や原則を言語化することはより緊急性を増している.印象的なLARPを制作している多くのLARP文化圏では,自分のプレイカルチャーと安全デザインの実践を理論的に考えるための概念的な装置にアクセスできないのが現状である.また,参加型演劇やVRのような関連分野では,インタラクション(相互的な作用)における信頼と幸福の役割が問われ始めたばかりである.本稿では,ランタイム・インタラクション(LARP実行時の相互的な作用)に焦点を当てて,物語性のある没入型体験のデザイナーのための最も基本的な出発点を提供することを意図している.2

[1.3] プレイヤーやデザイナーがLARP体験のために他の大陸にまで旅をするという「国際的なLARP」の出現は,異なる地域やプレイカルチャーからのプレイヤーの最も基本的な前提が異なる複雑なあり方を目に見える形で明らかにした.異なる国で同じLARPを実行したり,国際的なグループが混在していたりすると,以前は十分にテストされ,予測可能な結果が得られていたものが,膨大な数の新しい失敗事例を生み出す状態に陥ることが明らかになった.異なるプレイヤーのグループは,全く同じデザインを非常に安全な方法でプレイしたり,非常に危険な方法でプレイしたり,同じ状況に警戒したり快適に感じたり,お互いに持続不可能なほど支離滅裂な方法でLARPに作用したりすることになる可能性がある.

[1.4] これらの驚くべき結果の原因は,プレイヤーが当たり前と思っていることの根本的な違い,LARPの前,途中,後の相互作用の仕方,例えば,プレイヤー同士が敵対者であるか協働的な創造者であるか,といったように「扱われているかどうか」などについてのプレイヤーの暗黙の了解が疑われていない前提にあることが判明した.このような根強い思い込みと,そのような思い込みから生じる規範や慣習を,私は「プレイカルチャー」と呼んでいる.一つの地域や国は多くの並行するプレイカルチャーを包含しており,いくつかの前提条件を共有するある種のデザインの伝統は(必ずしもすべてではないが)いくつかの地域にまたがることが可能である.

[1.5] 例えば,私のデザインの伝統であるいわゆる「ノルディック・ラープ」は,3プレイは協働的であり,キャラクターの立場に関係なく,参加者全員が同じように有意義な体験や楽しい体験をすることを目標にしているという基本的な前提を北欧諸国のLARP文化と共有している.その他の前提条件は大きく異なる.私の出身地であるフィンランドでは,LARPのインタラクション・エンジン(相互的な応対を促進させる仕組み)の多くは,キャラクターの背景,目標,関係性によって構築され,LARPのデザイン・プロセスの一部として必然的に記述される.このようなデザインの伝統では,キャラクターを逸脱することなく,書かれた通りに一貫してプレイすることが,プレイがつまらなくなったり,方向性のないものになったりしても,それに従わなければならない強い暗黙の規範となっている.スウェーデンのLARPでは,歴史的にプレイヤーが自分でキャラクターを設定することが多かったが,現在では(LARPのデザイナーによって提供された場合でも)キャラクターの背景は文化的に出発点や提案として見られており,プレイしやすさや集団のためのクールなシーンを作るために調整したり,覆したりすることができる.この一つの例からもわかるように,プレイカルチャーにおける基本的な前提条件はメンバーには見えないことが多く,地域のデザインの伝統の結果であると同時にその伝統を形成するものでもあり,必然的にLARPを構築する上でのすべてのデザインの選択に影響を与え,プレイヤーが不慣れなLARPにどのように参加するかにも影響を与えている.

[1.6] この洞察は私の研究とデザインに大きな突破口を与え,ランタイムの外でプレイヤーが相互に作用する方法もシステムを構成していることを明らかにした.もしそのシステムが意図的にデザインされておらず,ランタイムのデザインと一致していなければ,プレイヤーは常に文化的規範や暗黙の前提に立ち返ることになってしまう.これはランタイム中のLARPや他のプレイヤーとのインタラクションだけでなく,準備やout-of-character (OOC=キャラクターではない状態,プレイヤー自身の事情やその言動)でのインタラクションにも影響を与える.言い換えれば,LARPのデザインの重要な部分,特にLARPの安全性に関しては,参加者の期待を特定の方向に誘導し,特定のLARPの特定のプレイヤーグループのためのプレイカルチャーをデザインすることです.

[1.7] 図 1では,LARPのデザイン要素とアクションが左から右へとタイムライン上に示されている.2つの同心円は現場での経験を表している.ランタイム中にもOOCの指示やインタラクションが参加者の経験を形作っていることは注目に値する.しかし,この経験は,外部からのダイナミクスや文化的慣習にも影響を受けており,これらの相互作用は,プロジェクトが公表された最初の瞬間から始まっている(「A」と記されている).例えば,「離れた見込み客」と呼ばれる人々は,イベントの参加者ではないが,おそらくイベントを検討したり,別の文脈でそのマーケティングの資料に出会ったりした人々であり,遠くからLARPの準備や評判,時にはソーシャルメディアを通じた実際の進行,そしてその結果のナラティヴィゼーションを追い続け,交流している.図に例として取り上げた物事のダイナミクスや文化的慣習がデザインによってどの程度形成されたり影響を受けたりするかについては,本稿の範囲外であるが,LARPの安全性とキャリブレーションにおいて最も重要なステップはプレイヤーの選択である.参加者が自分に適したイベントを自己選択できるようにすることは,LARP製作者側の保守的機能と同じくらい重要であることをここでは述べておく.

図 1: LARPデザインのタイムライン.
図 1: LARPデザインのタイムライン.
※ディロール:プレイ後,キャラクターから離れ,自分自身に段階的に戻るためのステップまたは手法.

[1.8] これは,個々のインタラクションの手法が他のLARPに移植ができない理由でもある.それはシステムの他の手法やルールだけでなく,例えばランタイムの開始時に参加者間で確立された信頼のレベルとも相互的に作用する.

[1.9] 「LARPの安全性」とは,参加者が傷を受けることが無いための包括的な用語であり,火の始末や武器の取り扱い訓練のようなものだけでなく,信頼と共創を可能にするためのもので,例えば,プレイスタイルのキャリブレーションの手法やコミュニティデザインなども含む.しかし,これらのすべては,常にシステム内のLARPの他のすべてのデザイン要素と相互作用している.

2. 安全性とキャリブレーションについて考える

[2.1] あなたがLARPをする時には安全性オプトアウト (LARPからの離脱),プレイスタイル・キャリブレーション4のための手法が必要になるであろう.安全性確保のための手法は危険な状況を防ぐために使用される方法であり; オプトアウトとキャリブレーションの手法はどのようなコンテンツにどのような方法で参加するか,プレイ時の経験の仕方を参加者に示すものになるであろう.

[2.2] 最も一般的な安全のための手法は,「私はキャラクターではなく,プレイヤーとして発言している」という言葉・コマンドである.いわゆるノルディック・ラープの伝統では,ランタイム中は(ある手法に必要な場合を除いて)プレイエリア内でプレイヤーとしての発言をしてはいけないという暗黙の規範が徹底されている.しかし,このようなプレイカルチャーの中でも,本当に緊急事態や怪我が発生した場合にすぐにプレイを中断できるように,ある種のストップワードが必要とされている.このような言葉・コマンドは参加者にとって直感的に使えるものでなければならない:「LARPをストップ」はほとんどの文脈で有効であろう.ローカルのプレイカルチャーでは「タイムアウト」や「オフゲーム」のような正式な用語を使っていることもよくある.OOCでの発言のためのローカルなコマンドは非常によく確立されている傾向があるので,イベントでは新しい参加者に実際に教えることを忘れてしまい,事実上役に立たなくなってしまうことがよくある.本稿から得られるポイントは,今まで暗黙の安全デザインになっていたことを次回のイベントで明確にすべきであることである.

[2.3] コマンドとともに,多くのLARP文化圏では,プレイヤーがキャラクターとしてではなくプレイヤーとして発言・行動していることを示すために手のジェスチャーを使うこともある.例えば,手をグーにして頭の上に掲げたり,手でTの字を表したりする(「タイムアウト」).手がふさがっていたり,縛られていたりして,すべての参加者がすべてのジェスチャーを物理的に実行できるわけではなく,緊急時には長距離のコミュニケーションが必要になることがあるので,代替手段としてコマンド(音声による表現)を備えることはまだ有用である.一般的に,片手でできるジェスチャーは,2つの手を必要とするジェスチャーよりもアクセスしやすく,実用的である.

[2.4] キャラクターとして動いているかプレイヤーとして動くかの概念的な区別と,それを伝える方法に加えて,多くのプレイカルチャーでは,緊急時のために特定のストップワードを採用している.私がフィンランドで過ごしていた時,それは英語の「hold (ホールド)」という言葉であった(フィンランド語やスウェーデン語で行うLARPでは決して口にすることはなかった単語).スウェーデンのファンタジー系LARPでは,「skarp skada (スカープ・スカダ;鋭い怪我の意味)」が一般的である.ストップ・ワード・プロトコルでは,耳の届く範囲にいる全員がストップ・ワードを繰り返して状況に注意を喚起し,緊急事態が回避されるか解決されるまで直ちにプレイを停止することを要求している.

[2.5] 緊急事態に対処する必要があるのは明らかであるが,プレイ中には,参加者がオプトアウトする必要がある状況が発生することもある.これは,LARPの内容とは関係がない理由(疲労困憊,ベビーシッターからの電話,トイレに行きたいなど)であったり,シーン自体が参加者にとってその時点ではプレイできないものであったりする.基本的には,オプトアウトすることに理由は必要がない:プレイヤーが何らかの理由で苛立たしくなりプレイを止めなければならないと感じた場合,そのプレイヤーは定義上,プレイ可能な状態ではないとされる.つまり,そのような状況に対処するための何らかのツールと,それを防ぐための合理的な手法が必要ということである.

[2.6] シーンからオプトアウトするためには,参加者は物理的社会的物語世界的(diegetically)5に退場することができなければならない.もしあなたの参加したLARPが物理的な制限を使っているならば,プレイヤーは必要に応じてお互いが離脱できる準備をしておく必要がある.LARPにもよるが,実際の物理的制限(ドアに鍵をかける.手錠を手にはめる)をもし許可するのであれば,適切なルールや対処方針を火災の予防や緊急避難の計画を含む一般的なイベントのセキュリティと総合的に判断しなければならない.

[2.7] 状況から離れることは,参加者やキャラクターにとって社会的な犠牲を伴うものではない.例えば,ほとんどの人は,グループシーンを一時停止して,その場を離れる必要があることをプレイヤーとして言うのは難しいと思うであろう.このような理由から,ルックダウン(手を目の前に水平に挙げて下を向く)のような手のジェスチャーが便利である(詳しくは後述).立ち去ろうとしている人がOOCの理由でそうしているのを他のプレイヤーに伝えるためのツールであるので,止めたり質問したりしてはいけないことになる.

[2.8] 物語上は,その人物の不在は通常,架空のキャラクターがトイレに行った場合と同じように,全く関知されない.その不在が目立った場合,プレイヤーは,「彼らはどうやら遠くでなにかに捕まってしまったのかもしれない,後で話そう」と言って,その不在に対して関知することができる.小さな物語上の矛盾を修正することは,すべてのロールプレイングの一部であり,熟練のプレイヤーはこれに非常に精通している.協働的取り組みを中心とするLARPでは,この種のストーリー交渉で問題が発生することは非常に稀で,そのような流儀を持つプレイヤーは,それがどのようにして問題になるのかを想像することさえ困難であるかもしれない.

[2.9] 対戦型のLARPでは,LARP上の出来事の勝敗に関係なく,例えば対立の最中にキャラクターが離れていくことは,他のプレイヤーにとって不公平なことだと認識されることがある.このようなLARPでは,シーンの結果をプレイアウトせずに解決できるような手法による解決策を提供したら良いかもしれない.このような手法を使うことの社会的コストを下げるために,「プレイヤーはLARPよりも重要である」などの原則に基づいて,対戦型LARPの周りのプレイカルチャーを根本的に協力的なものにするようにデザインすることができる.これらの価値観を明確にして一貫して行動することで,プレイヤーはお互いを人間第一主義でフィクションの中でのみ敵対者として扱うことを思い起こさせることができる.

[2.10] しかし,コラボレーションLARPでも,一人が去ってしまった場合には,プレイヤーが物語の首尾一貫性を保つために,物語の回避策が必要になることがある.例えば,刑務所LARPでは,キャラクターが「所長と話すために呼ばれた」という理由で,プレイヤーがいつでも独房から出られる設定にすることができる.他のLARPでは,例えば,ある状況から離れることが常に社会的に受け入れられるようにフィクションの文化をデザインすることで,フィクションのレベルで完全にオプトアウトすることによる社会的コストと物語的負担を防ぐことさえできるかもしれない.最もエレガントなのは,オプトアウトのメタテクニックを物語的な説明と統合することである.SFテレビドラマ『Westworld』にインスパイアされた『Conscience』(スペイン, 2018)というLARPでは,アンドロイドホストのプレイヤーは,「バッテリー残量が少ない」というコードワードを使って,常にLARPから離脱する必要性を周囲に表明することができた.

[2.11] 最後に,プレイスタイルのキャリブレーションのための手法が必要であろう.これにより,プレイヤーは困難な命題についても他のプレイヤーと一緒に繊細な話をする時に,シーンを全員が快適な距離感を保って流動的に維持することができる.LARPの内容によっては,身体的な同意(自分の体で何ができるか),物語的な同意(今回はどのような物語に参加できるか),プレイスタイルの強度(今回はどのような行動に参加できるか,どのような行動をさせられるか)のキャリブレーションが必要になるかもしれない.

[2.12] プレイスタイルの強度は最上位の用語である.あるLARPやLARP文化圏の中には,キス(肉体的な)やキャンペーンキャラクターの殺害(物語的な)など,特定のアクションのために個別の同意交渉を必要とするものがある.また,そのような状況は,LARP全体に適用されるルール(「肉体的な接触は許されない」,「最後の一幕までキャラクターを殺すことはできないが,クライマックスではすべての紛争が死につながる」)や,プレイスタイルの交渉の一部として,あるいはプレイヤーが特定のプレイから事前にオプトアウトできるようにすることで,回避や解決が可能な場合もある.

3. 強制的手法 対 控え目な手法

[3.1] 物語の同意とプレイスタイルの強さについてのプレイヤー同士の長い会話は,最も深い具体的な交渉体験をもたらす手法であると同時に,最も押し付けがましいものでもある:なぜなら物語の進行を必要以上に遅滞させ,特に多数のプレイヤーが相互的に関わる際には扱いにくく,時間がかかる.強制的な手法はプレイヤー全員に作用し,全員のプレイを休止するものであるのに対し,控え目な手法は近くにいる他者にしか見えない手法であることが多いため,限定的なメタテクニック足り得る.

[3.2] 『Inside Hamlet』(デンマーク, 2015)では,タップアウト(他のプレイヤーの腕を2回素早くタップすること)をオプトアウトの手法とキャリブレーションの手法の両方として採用していた(詳しくは後述).さらに,そのLARPには,エスカレーション(プレイスタイルや対立の強さなどの現象の段階的拡張を誘う)とデ・エスカレーション(他のプレイヤーに現象を段階的縮小を指示する)のための言語的な手法があった.この場合,エスカレーションの手法もまた,控え目なものであった:「腐っている」または「純粋」という言葉を自然に発言したら,他のプレイヤーに目的を伝えられた.

[3.3] 対照的に,『BAPHOMET』(デンマーク, 2015)は,言葉によるエスカレーションの手法を採用していなかったが,タップアウトとエスカレーションのジェスチャー(協力するプレイヤーの腕やふくらはぎを引っ掻く)を組み合わせていた.この方法では,多くのインタラクションが非言語であり,プレイヤーが物理的に近い距離でインタラクションを行うLARPでは理にかなっている.

[3.4] デザインに必要なほとんどの手法やその他のデザイン要素は,強制的なものにするか,控え目なものにするか,あるいはその中間のどこかにするかの検討をすることになる.ほとんどの場合,機能美的な理由でこの選択をすることになる.しかし,安全性,オプトアウト,プレイスタイルのキャリブレーションなど,参加者が危険を回避し,ストレス下でプレイするための中心的な要素である場合には,実用的である必要もある.慌ただしい環境や興奮しがちな環境では,控え目な手法はうまく機能しない.また,お互いにあまり気配りができていないプレイヤーとはうまくいかない.もしあなたが少しでも懸念を持つならば,手法を少しだけ,あるいはかなり強制的なものにして,LARPの前には必ず文脈の中で試すようにしてください.6

[3.5] ランタイムの前には必ずプレイヤーとLARPの運営スタッフに安全のための手法を一緒に練習させるようにしてください.そうしないと,安全のための手法が使われる可能性が低くなる.参加者が実際よりも安全だと感じるようになってしまうので,これは手法を取り入れていないよりも悪いことになる.オプトアウトやキャリブレーションの手法についても同じことが言える.これらについては,一般的に潜在的な結果はそれほど悲惨ではない.ほとんどの人は,たとえフィクションの中で自分が望んでいないようなシーンを経験したとしても平気である.しかし,例えば,トラウマや様々な恐怖症の引き金となるようなテーマや状況に関与する必要がないことを確実にするために,参加者はこれらのツールに依存している.

[3.6] 個々のレベルでは,オプトアウトやキャリブレーションの手法は安全のための手法として概念化することができる(実際,「安全のための手法」とは,それらのすべてを総称して呼ばれることが多い).このため,それらをデザインし,伝え,実践することに特に注意を払い,他の手法,デザインの選択,プレイカルチャーがそれらの使用を損なうことのないようにしなければならない.

4. オプトアウトデザインの基本的な文化規範

[4.1] 安全とキャリブレーションの手法は,相互的に首尾一貫したものでなければならないし,全体的なデザインも首尾一貫したものでなければならず,それが何であれ,プレイヤーが体験の本質に関わることを妨げてはならない.プレイカルチャーに合わせて手法をデザインするか,手法を中心にプレイカルチャーを再デザインする必要がある.

[4.2] あなたのLARPのためにプレイカルチャーをデザインし,特定の方向に誘導することはそれ自身の分野である.しかし,基本的には,参加者とのすべての交流において,あなたが目指している雰囲気と価値観を,会う前の書面でのコミュニケーションを含めて,一貫して示す必要がある.さらに,ランタイム が始まるまでには,全員がLARPのフィクションだけでなく,そのルールや仕組みを理解し,使い方を知っていることを信頼し,フィクションに多少の中断や社会的な不快感が生じたとしても,実際にプレイしても十分に安全だと感じられるようにする必要がある.

[4.3] 現実的には,プレイヤー全員がすでにお互いを知っている場合を除いて,ランタイムの前にキャラクターから離れた場所に集める必要があるということである.見知らぬ人に自己紹介をしてもらうだけでも,LARP前の短いワークショップは,プレイヤーとキャラクターを別個のものとして認識させるのに役立つ.安全のための手法やキャリブレーションの手法を使う場合は,プレイヤーにそれらを一緒に練習させなければならない.これは,全員がすでに知っている場合でも同様である.誰が誰を弾いているか,ダンスの練習をしているか,椅子を移動させているかなど,この時期にプレイヤーと一緒に達成しなければならないことは何であれ,あなたが達成しようとしているプレイカルチャーをサポートするために,これらの活動をデザインしなければならない.

[4.4] 非常に競争の激しいプレイカルチャーには,ワークショップの間に参加者全員で声を大にして,LARPよりもプレイヤーの方が重要だと言わせるのが有効だと思う.ある人にとっては斬新なアイデアになるかもしれないが,ちょっと立ち止まって考えてみると,他の人を傷つけるよりも,クールなシーンをスキップしたり,適応させたりすることの方が好きな人もいるであろう.それをひと時も考えたことがない人もいて,そのための正式な枠組みを提供することは,ワークショップにおける時間の良い投資だと思う.

[4.5] オプトアウトの手法を実践する際に確立しておくべき重要なルールは,他の参加者が積極的に参加しているシーンから個々のプレイヤーが流動的にオプトアウトすることを可能にする手法で,状況から離れる必要があるプレイヤーにその理由を話すように決して圧力をかけないことである.その理由は個人的に深刻なものであったり,身体的な状態であったり,LARPとは無関係であるにもかかわらずその状況の中で強まってしまった感情的な状態であったりする.

[4.6] オプトアウトの仕組みが訓練されているので,他のプレイヤーがオプトアウトしても迷惑にならないということも伝えておくべきである.異なるプレイカルチャーを持つプレイヤーが参加するLARPでは,ワークショップでは私は文字通り「自分のことではない」という言葉を参加者に声に出して繰り返させ,個人的な感情を持たないように注意させている.7

[4.7] 参加者がキャリブレーションの交渉で境界線を示しやすくし,オプトアウトしやすい文化をサポートするために,私は参加者に,誰かが自分の精神的,感情的,または身体的な限界を示した時の適切な境界線を示したときの適切な応答は常に「ありがとう」であることを思い出させている.何らかのプレイのエスカレーションに誰かを招待したときに,あなたの協力者があなたの提案を断ったり,反対の提案をしたりした場合,参加者はあなたに信頼の表明をしたことになる.

[4.8] 人生の中では,社会的な申し入れが断られた場合,ほとんどの人は自動的に恥をかく,または拒否されたと感じている.恥と拒絶は強力な感情であり,私たちのすべては,少なくとも時々,何か嫌味を言ったり,攻撃的になったりすることで,そのように感じるようにされていることに反応することを経験している.残念なことに,私たちはまた,自分の限界を述べたときに他の人々が私たちに向かってそのような反応をしたことをおそらく経験している.あなたの参加者の多くは,特に女性として社会化(価値や規範を身につける状態に)されている人やマイノリティに属している人は,自分が感じている不愉快なことに注目されるよりも,静かにしていたり,不快な状況にとどまったりする方が良いか,安全であることを人生で学んでいるであろう.彼らはしばしば,娯楽や充実した経験をするために来ていたLARPの中でさえ,単なる習慣から自分自身を惨めにしたり,恐れたりすることを許すであろう.

[4.9] この社会化は深く,一回のLARPワークショップでは壊せない.しかし,一時的な規範システムや言葉の習慣は,グループ内で急速に確立され,ありがたいことに私たちの内的な不安を部分的に上書きすることができる.これが参加者にキャリブレーションの練習で自分の限界を示すことに声を大にして感謝させる理由である.この文脈では,自分自身の経験と境界線に責任を持つことが望ましいことであり,賞賛されることであると,彼らに自分の体で感じてもらう必要があるのである.時には,ランタイム中の交渉の後にお互いに感謝することをルールで要求することもある.「なぜかというと,何人かの人が思い出させる必要があるからで,私と一緒に言ってください:プレーヤーはLARPよりも重要だ」と私が言うこともある.

[4.10] このようなキャッチフレーズを使うワークショップでは,何度か繰り返して,必ず全員で一緒に言葉を言わせることが多い.これは基本的なソーシャルハックで,共通の儀式をすることで自動的にグループ内の信頼関係が生まれるからである.しばらくすると,言葉の繰り返しもいい感じになってきて,みんなで笑ったりすることで,さらに強いソーシャルマジックになりうる.

5. 安全のために共創を制限する

[5.1] LARPイベントの中で力学を一緒に練習する部分をワークショップと呼ぶことが多く,動詞として「ワークショップ」を使うこともある:「キャリブレーションの手法をワークショップしないといけない」.演劇やライティングのような他の芸術では,何かをワークショップすることは,それを一緒に反復することを意味し,LARPのワークショップにはそのような要素が含まれていることが多い.例えば,参加者はデザインの枠組みの中でフィクションの文化の儀式や慣習を共同で発展させることができる.しかし,安全やキャリブレーションの手法をデザインしたり,導入したりするのは参加者ではないことを理解することは非常に重要である.

[5.2] 異なる背景を持つプレイヤーが参加するLARPイベントでは,安全性の説明会やキャリブレーションワークショップの間に,そのプレイヤーが他のLARPでよく知っている手法の追加や代替を提案することは驚くほどよくあることである.もしそのブリーフィングがコアデザインチームのメンバーによって進行されていない場合,特に多くの参加者が賛成しているようであれば,進行役はその場しのぎでその提案に同意することがあるかもしれない.誰もが明らかに最善の意図から行動しているが,これはとても良くない事態である.

[5.3] すべての追加ルールや手法はプレイヤーの認知負荷を増加させる.ルールが多いからといって,より良いとか安全というわけではない.さらに,LARPが必要とするすべてのルールや手法は,この時点ですでに整備されており,テストされているはずである.自然発生的に追加されたものは,すでに設置されている要素との整合性や,LARPの全体的な機能美を損なう.最悪の場合は,参加者がブリーフィングのために小グループに分かれ,あるプレイヤーには自然発生的なゲームデザインが任意に追加され,他のプレイヤーには追加されないことがある.

[5.4] このような自発的な貢献を断ち切ろうとすると,プレイヤーは,使い慣れたルールやツールが自分たちにとって使いやすいと主張するかもしれない.この仮定は新しい参加者を包括するものではないし,他のプレイカルチャーからの他のプレイヤーに対しても事実上正しいものではない.もしプレイヤーの一部または全員が,イベントやシステムを越えて内部的に一貫したデザイン要素を持つ地域LARPの流儀を持って来ているが,あなたのイベントが異なる場合,彼らが自国のLARPから専門用語やメタテクニックを導入してはいけないことを明確に伝えることが重要である.

[5.5] 参加者の中にはタイムアウトのジェスチャーを知らない人や「OOC」の意味を理解していない人に遭遇したことがない人もいるかもしれない.しかし,そのような伝統が普遍的なものであると仮定すると,混乱や排除,最悪の場合危険な状況を引き起こす危険性がある.

[5.6] 私がデザインしているノルディック・ラープの伝統では,LARPは特注のシステムを用いたワンショットであることが多く,プレイヤーはイベントのたびにルールや手法を一から学び直す必要があることを知っている.この伝統はルールが簡素で,理解するために大きな労力がいらない.戦闘ルールが必要な場合でも,ルールセットは5ページを超えることはほとんどない.各LARPのテーマと一般的な状況が事前に分かっているので,数年に渡るキャンペーン中に起こりうる可能性のある相互作用を網羅した何百ページものサンドボックスシステムは必要ない.安全性とキャリブレーションツールもまた,イベント間で変化したり,微妙に異なる方法で再利用したりすることができるため,プレイヤーはその使用法を再学習する必要がある.

[5.7] ここ数年の間に,私がデザインや普及に携わっていた3つの安全のための手法が一世を風靡した.タップアウトやルックダウン,OKチェックインなどは,突如として国際的なイベントの数々に登場し,一部の人気キャンペーンシステムの公式ルールセットにまで含まれるようになっていた.実際,私自身が安全講習会を行っているイベントでも,プレイヤーは熱心にこれらの手法を導入しようとしている.もちろん,私がそれを拒否したことは,私が明確にしようとしている原則の中でも最も良い例である:優れた手法であっても,すべてのプレイヤーグループやLARP,あるいはすべてのシステムに適合するわけではない.

[5.8] 以下では,この3つの手法を詳細に説明し,それが自分にとって有用かどうかを評価するためのバリエーションとアプローチの両方を提供することを試みたいと思う.

6. ツールキット:OKチェックイン

[6.1] OKチェックインは,周りのプレイの流れを止めることなく,(キャラクターではなく)プレイヤーがお互いの精神面や肉体面において,問題がないかどうかのコミュニケーションを取ることを可能にするインタラクションな手法である.これは主にアメリカで発明されたものである.「OK」シンボルを点滅させてプレイを中断せずにプレイヤーへの配慮を示すジェスチャーとして,2009年か2010年にはすでにアメリカのLARP界隈で登場していたようである.どう考えてもスキューバダイビングから採用されたものであろう.基本的なバリエーションでは,相手はOKサインで反応するが,そうでない場合は,相手が苦痛を感じていることを示す.いくつかのLARPでは,ポジティブな反応とネガティブな反応を伝えるために親指を立てたり,親指を下に向けたりすることもある.

Fig. 2: OK Check-In Hand-Signs
Fig. 2: OK Check-In Hand-Signs

[6.2] 2016年,アメリカのデザイナーMaury Brown,Sarah Lynne Bowman,Harrison Greeneは,Learn Larp社のデスティネーションイベント『New World Magischola (NWM)』のために,このテクニックの興味深い微調整を提供した.このアメリカのLARPでは,コラボレーションプレイやキャラクターの感情に深く浸るためのデザインなど,ヨーロッパにインスパイアされたデザイン選択を多くのプレイヤーに初めて知ってもらうことができた.8例えば,あるプレイヤーが実際に泣いている姿を見ることで他のプレイヤーが不安になり,泣いている人がロールプレイをしているのか,実際に不幸なのかを確認する必要があるかもしれないという想定がその背景であった.また,このスタイルのプレイに慣れていないプレイヤーは,出会ったばかりの人たちと一緒にプレイしていても,実際の感情的・肉体的苦痛を認めることを社会的に心地よく感じないかもしれないことも明らかになっていた.この手法はこれらのパラメータに適応され,以下に説明されるのがそのバージョンである(サイドバー 1 and サイドバー 2を参照).9

サイドバー 1: OKチェックイン基本的な手順

一人の人が別の人に向かって「OK」のハンドサインをする.これは,「あなたは大丈夫か?」という質問を示している.他のプレイヤーは3つの方法のいずれかで応答する(図 2を参照).
1. 親指を立てる – 大丈夫で,プレイを続けることができる意味.
2. レベルハンド – プレイヤーがどのように感じているのかよくわからない,または非常に良くも悪くもない意味.これは,質問をしている人が親指を下に向けたものとして扱わなければならない.
3. 親指を下に向ける – プレイヤーは実際にはOKではなく,状況から離脱されるべきである意味.

[6.3] その年の後半,ニューオーリンズで開催された『ワールド・オブ・ダークネス』をテーマにしたグランド・マスカレードのコンベンションで,Participation Design Agency社の『End of the Line』LARP (2016)の安全性とキャリブレーションの手法をデザインしていたときに,Brownから多くのサポートを受けながら,BowmanとGreeneと共同でノルディックデザインをその土地の流儀でプレイ可能なものにする方法を考え出すことができた.『End of the Line』はナイトクラブを舞台にしたLARPで,シミュレートされた官能,暴力,ドラッグの服用など,多くの身体的接触が含まれている.オリジナルのデザインでは,これらの要素はすべて当然のこととして扱われている.しかし,ニューオーリンズでは,私たちのプレイヤーベースはもっぱらアメリカのヴァンパイアプレイヤーで,より抽象的な暴力表現に慣れていて,接触を完全に禁止するルールシステムに慣れていることが多かったので,ここでもOKチェックインを使うことになった.この2つのソースから,OKチェックインは,それまで同様のツールを全く利用できなかったプレイヤーコミュニティに火のように広がっていったのである.10

[6.4] 後者の2つの信号に対する適切な応答が何であるかを成文化すべきである.もしプレイヤーがこの種の手法にあまり慣れていないのであれば,スクリプト(特定の言い回し)を提供すべきである.ニューオーリンズの『End of the Line』では,「ゲーム外の部屋まで案内してもいいですか?」というスクリプトを設けた.(ゲーム外の部屋は,リスニングスキルとクッキーを持ったオーガナイザーが準備したキャラクタープレイのないスペースであった).

サイドバー 2: OKチェックイン アドオン

『End of the Line』のニューオーリンズ実行については,基本的な手順に2つのサインを追加した.
• 自発的に親指を下に向ける – プレイヤーは親指を下に向けるサインを使用して,自分が不快であることを他のプレイヤーに自発的に合図することができた.また,親指を下に向けるサインは,2人のカメラマン(キャラクターとプレイヤー両方として撮影していた)に,プレイヤーがその時点で撮影されることを望んでいないことを合図するために使用することができた.
• 両手の親指を立てたり,笑顔で親指を立てたりする – チェックインしたときに,特に一対一の状況では,この方法で熱烈な同意を表明すると,積極的に今やっていることは何でも継続するための肯定的な信号として機能する.

[6.5] レベルハンドという真ん中のオプションは,多くの人々が持っている迷惑になりたくないというデフォルトの反応をより適切に対処するためにある.自分が苦しんでいることを認容するよりも,「まあね」と答え方が簡単だとほとんどの人が感じる(特に,苦しんでいるよりも居心地の悪い場合).LARPのデザインにOKチェックインを導入することは,プレイヤーが不快になるような状況に留まる必要がないことを明示的に示すものである.これは直観的ではないように思えるかもしれないが,私たちは一貫してこのことを明確にすることでプレイ中に勇気が出ることを発見してきた.ルールや社会的な圧力によって,本当にやりたくないシーンに参加することを強制されることがないことを知っているので,ほとんどのプレイヤーは,適切なときには自分が楽しめる限界に自分を近づけることができる.

[6.6] 3つの選択肢を提供することはまた,質問の受け手に,自分がどのように感じているかを評価するために少し長めのポーズを取らせることを強制する.激しいプレイに圧倒されているプレイヤーは,特にフィクションの状況に対する強い身体的,感情的反応を経験したことがない場合は,それがなぜ気分を落ち込ませているのかに気づかないかもしれない.

7. OKチェックインは何のためであろうか

[7.1] LARPにおいて「良くない」の感じ方はいろいろある.キャラクターはプレイヤーが関わりたくない状況に置かれているかもしれない(しかし,礼儀としてそこに留まっているし,徐々に状況が変化していき,プレイヤーは自分の周りで状況が変化していく中で自分がどう感じているのかを考えるのを止められなかった).そのプレイヤーは,物理的に安全ではないと感じる状況に身を置いていたり,よくよく考えてみると信頼できないプレイヤーと交流していたりするかもしれない.その場合でも,自分が何を感じているのかを理解し,その場から離れるためには,他のプレイヤーからのチェックインの催促が必要になるかもしれない.そのプレイヤーは通行人かもしれないし,その場にいる誰かかもしれない.

[7.2] 一対一のロールプレイングの状況で,激しい,おそらく暴力的な,または親密な状況になることがある.あることがきっかけで,キャラクター同士で叫んだり,首をつっこんだり,あるいはキャラクターが暗殺者にラテックスナイフで刺されて,キャンペーンの重鎮の命を絶ったりすることもあるであろう.もし共にいるプレイヤーが何が起こっているのかを完全に理解できていない場合や,相手が恐らくやめたいと思う場合には,相手がそれにあまり興味を持っていないかどうか,その内容がこのLARPで通常起こらないものである場合,全体がちょっとしたサプライズだった場合,何か意味のある重要なこと(キャンペーンキャラクターの死のような)が起こった場合には,相手にチェックをするのは良いアイデアであろう.

[7.3] あなたのLARPがトラウマになる可能性がある話題のプレイを許可している場合や,特にスタンスがなく,激しい話題が急に出てきた場合は,プレイヤーにチェックしよう.特に誰かが少し不安そうな顔をしていたり,攻撃的な顔をしていたりした場合は要注意である.実際,LARP中に他の人がキャラクターや実生活で不幸なのではないか,何かがおかしいのではないかと疑問に思ったら,チェックしよう.もしそうしなければ,その心配は充実したプレイ経験からあなたの気をそらすであろう.チェックした時に何でもなければ,安心するであろう.もしその人が,自分自身の状態を把握するためにチェックインの後押しを必要としていたり,厄介な状況から抜け出すためにあなたの助けを必要としているなら,あなたはチェックインして良かったと思うであろう.そして,相手が絶対に大丈夫なら,あなたがチェックインするのに十分な気遣いをしてくれたことを知って,相手は喜ぶであろう.

8. システムの一部としてのOKチェックイン

[8.1] OKチェックインは安全のための手法である.不幸になっている,病気になっている,あるいは自分のためにならない状況から自分を取り除くことができない,まれに実際に有害な状況に陥っているプレイヤーを特定し,助けるのに役立つものである.また,ある種の大まかなキャリブレーションの手法としても使用できる.他のキャリブレーションツールを使ったLARPでは,ほとんどの場合は安全のために使われるが,参加者がLARPよりもプレイヤーが重要であるという原則に基づいて存在していることを示すという重要な効果もある.

[8.2] 拡張的な交渉が行われ,プレイヤーが自分の感情を語るためにキャラクターから離れ,プレイヤー発言することが多いLARPでは,おそらく冗長になるだろう.とても繊細なインタラクションを読み取ることに慣れているプレイヤーがいるような,非常に協力的なプレイカルチャーでは,不必要に不便であろう.あるいは,やっていることが機能美的に適合していないかもしれないが,その場合は,同じ結果が得られる別のものを使いたいかもしれない.

[8.3] OKチェックインが単独で,少なくとも自発的に親指を下に向けるジェスチャーを追加することで,単一の安全性とキャリブレーションの手法として機能するLARPを想像することができる.しかし,すべてのデザインの選択と同様に,あなたのLARPと会場の物理的な現実の要素を念頭に置いておく必要がある.OKチェックインを行うには,参加者は少なくとも片手を自由に使えなければならないし,他のプレイヤーとの視界を妨げないようにしなければならない.複数のプレイヤーが同時に行動するような混沌とした緊迫感のあるシーンでは全く意味がない.そのような状況がLARPの特徴であるならば,OKチェックインは不適切であり,LARPが軌道に乗ったときに失敗するだけの誤った安全感を生み出してしまう.

9. ツールキット:タップアウト

[9.1] タップアウトはプレイヤー同士が自分の限界についてコミュニケーションをとるための物理的な手法である.インタラクションな手法としては非常に明白なので,多くのLARPコミュニティで独自に「発明」されたものだと思われる.『Inside Hamlet』のキャリブレーションデザインに導入するまでは出会ったことがないと思う(サイドバー 3を参照).私自身がこのコンセプトをどこから拾ってきたのか完全には覚えていないが,プロレスからだと推測している.

サイドバー 3: タップアウト基本的な手順
  1. タップアウトを行うには,相手の腕や体の他の部分を2回叩き,相手の注意を引くのに必要なだけ強く何度でもこの動作を繰り返す(通常は1回だけで,かなりソフトに叩いても十分である).
  2. 誰もが自分のやっていることを止める.もしあなたが誰かを抱いていたら,その人を解放し,もしあなたが叫んでいたら,叫んでいるのを休ませ,もしあなたが誰かの道を塞いでいたら,その人が自由に動くことを可能にするなど.すべての状況に「能動的」な当事者と「受動的」な当事者がいるわけではないことに注意してください.そのような関係があっても,受動的な側だけではなく,能動的な側もタップアウトできる.
  3. この小さな休憩では,タップアウトした人は,留まるか出るかを選ぶことができる.もし出て行く必要がある場合は,問答無用で出て行っても構まわない.私が関わっているLARPでは,通常,これはプレイヤーとキャラクターの両方がその場を離れることを意味する.(詳しい議論は以下を参照).もし残る場合は,シーンを継続したいということを意味するが,起こっていた現象を少しだけ減らしてください:叫び声を少なくし,性的な表現を少なくし,動きを制限しない…全員がそれを少し減らし,プレイを継続し,この時,プレイヤー発言は必要ない.(それが要求されない限り,その場合はあなたが話すが,以下を参照してください).

[9.2] 誰かがタップアウトしたとき,あなたはその理由を聞いてはいけないし,その理由を教えてはいけない.これはあなたと他のプレイヤーの両方を守るためである.もしかしたら,あなたの口臭がひどいからタップアウトしたのかもしれない.それについて話したくないであろう.もしかしたら,タップアウトしたのは,その対話が突然,自分の過去のトラウマになるような状況を思い出させたからかもしれない.真夜中だし,相手はすでに一度就寝して,今,ブラジャーを身に着けていなく,それについて奇妙に感じるので,相手はタップアウトした可能性がある.「理由はあなたの社会生活に関係しない.そして,それはあなたについてではない.」という態度を練習してきたのに役立つ場所であろう.

[9.3] 理由を語らないことには二重の機能がある.セルフケアのための異なる有効な理由のヒエラルキーの作成を避けることになるのがその一つ.また,非常に個人的な理由でタップアウトしてしまう人を保護することにもなる.極端な例を挙げるなら,レイプのトラウマのためだけにタップアウトすることが許されている場合,その経験が自らにあることを共有したくないかもしれないので,誰もタップアウトしないであろう.そのため,ロールプレイが困難になったり,不可能になったりしたときには,いつでもタップアウトできるようにしておく必要がある.些細な不快感(誰かが自分の足の上に立っている)にタップアウトを使うことに慣れておくと,大きな不快感(シーンが大きな個人的なトラウマのテーマに移ろうとしている)にもうまくいく可能性が高くなる.

[9.4] それにかかわらず,タップアウトしたプレイヤーは,なぜそのような好みを持っているのかを言わなくても良いし,プレイスタイルの提案をすることができる.例えば,「このまま続けてもいいけど,物理的に私をブロックしないでくれない?叫んでもいいですよ,よければもっと叫んでもいいですよ」と言うことができる.このように言うのは,以前に小さな問題を口頭で伝える練習をしたことがあれば簡単である.例えば,あるプレイヤーがタップアウトでアクションを止めたときに一歩下がるのを忘れてしまった場合に,「あなたは私の足の上に立っている」と囁くなどのように.このような指示に対する適切な反応は,例えば「よかった,ありがとう」や「ごめん,ありがとう」などである.

[9.5] 同伴するプレイヤーと連絡が取れない場合や,マルチプレイヤーの場合は,代わりに自分の胸を2回叩くことができる.しかし,これはやはり視覚による認識が必要で,例えば暗い場所や多くの人で混雑した状況で交流している場合など,すべてのLARPでは機能しないかもしれない.ニューオーリンズでの『End of the Line』では,手が届かないときにタップアウトするためにルックダウンを平行して使用した(以下で詳しく説明する).

10. システムの一部としてのタップアウト

[10.1] タップアウトは間接的な意味での安全のための手法であり,参加者がセルフケアをすることで,疲れすぎたり,圧倒されすぎて周囲や他のプレイヤーに気を配ることができなくなる前に,自分の楽しみや限界を把握することを可能にする.しかし,基本的には,特定の状況下でのプレイスタイルの強さについて,プレイヤーとプレイヤーが積極的にコミュニケーションをとるためのツールであるキャリブレーションの手法,具体的にはデ・エスカレーションとしての手法である.

[10.2] タップアウトは他のプレイスタイルの交渉術と組み合わせることができるが,目的は​「OK,私たちが合意したことは(明示的にも暗黙的にも),今までにそれを経験したことで,私は今,これがそれ以上それを探求する必要がないことだとわかった」というようなものである.または,「はぁ,それらの言葉は私によりもあなたに何か異なる意味を持っていることがわかって,これ以上は私には無理だ」.とか,「おい,私はこのシーンに夢中になったんだ,君もそうだと思うけど,このまま続くと明日には冷静になれないからやめた方がいいと思ったんだ」とか.これらはすべて,プレイをキャリブレーションするための正当な理由であり,煽られた状態では言語化するのは難しい.だからこそ,タップアウトは便利で,あえて言えばエレガントなのだ.

[10.3] 上記がうまく機能するために必要ないくつかの追加のルールと要件がある.まず,すべてのプレイヤーは常に少なくとも片手を自由に使えなければならない.これはルールに記載されているべきであり,何らかの物理的な拘束が発生する可能性のあるLARPでは,参加者は片手を自由にするか,口頭での代替手段の練習をする必要がある.また,実際に人を縛るのは安全デザイン上良くないことが多い:縛るふりをしても構わない.また,すべてのデザインの選択において,すべてのプレイヤーが必ずしも同じ手足の数や行動能力を持っているわけではないことを覚えておく必要がある.

[10.4] 最も重要なことは,時間は不可逆的であるため,すでに起きてしまったことを防ぐためにタップアウトすることはできないということである.タップアウトが安全性とオプトアウトのデザインの核心であるならば,人をジャンプさせたり,後ろから掴んだりするような行為を積極的に禁止する「不意打ち禁止」ルールを追加しなければならない.基本的には,これにはゆっくりとしたエスカレーションプレイヤーの意図を明確に伝えることが必要である.

[10.5] これは,バレットタイムでの同意 (bullet-time consent)と呼ばれることもある.基本的には,ある種のアクション(暴力的なものや官能的なものなど)をスローモーションでプレイし,物語的に適切であれば計画されたアクションを口頭で伝え,相手のプレイヤーが自分の位置や反応の仕方,タップアウトするかどうかなどを能動的に選択できるようにする.

[10.6] これはハイペースで物理的な戦闘手法を持つアクションLARPでは全く機能しない(戦闘をバレットタイムまで遅くすることが機能美として適切でシステムに組み込まれている場合を除く).この種のLARPでは,通常,インタラクションの前や戦闘ルールの中でプレイスタイルの強度を交渉する必要があり,タップアウトは物理的な不快感を示すためだけに機能する.しかし,バレットタイムでの同意は,暗くて暴力的なLARPであっても,その雰囲気が忍び寄る脅威についてのものであり,暴力的な口論がすべて意味のあるものであり,それが構築されている場合には,緩やかに進むLARP(暗い雰囲気のものも含む)では非常にうまく機能する.

[10.7] 『Inside Hamlet』では,バレットタイムでの同意と,タップアウトと口頭でのエスカレーションとデエスカレーションの合図を組み合わせ,明らかにキャラクターを崩さずにプレイの強度をキャリブレーションすることを可能にした.参加者は,全く予測できないことをしたい場合には,素早く控え目なキャラクター交渉を行うように促されました.

[10.8] ニューオーリンズで開催された『End of the Line』では,ほとんどのプレイヤーが自然主義的な暴力と親密さのシミュレーションに慣れておらず,一般的な同意の仕組みにも慣れていないため,私たちはタップアウトと,30分かそれ以上かかるかもしれない非常に詳細な口頭によるプレイヤー同士での同意交渉を組み合わせた.キャラクターのプレイが30分以上中断されることもある「Mind’s Eye Theatre」システムの中での延々と続く抽象的な紛争シミュレーションに慣れている『Vampire』のプレイヤーには,これらの交渉は流動的で慎重なものに感じられた.

[10.9] 2017年にベルリンで行われた同じLARPの再実行時は,そのような米国LARPERは,すでに物理的なプレイスタイルと非常に軽い手法に慣れているヨーロッパのプレイヤーとが入り混じって参加していた.ヨーロッパ人にとって,同意交渉手法は非常に不器用に感じられ,知り合いの信頼しているプレイヤーとのやりとりでそれらを使用することは殆ど起こらなかった.このことは,物語の論理ではなく,キャラクターと関係のないプレイヤー間の信頼関係に基づいたインタラクションを優先させてしまう可能性が高いため,好ましくない.振り返ってみると,このシステムは米国のプレイヤーにとっては成功したが,混合グループでは失敗だった.それよりも,ワークショップを再デザインして,プレイヤーグループ全体の結束力を高め,アメリカのプレイヤーが少し軽い手法を使っても安心して遊べるように十分な信頼関係を築くべきだったのだ.

11. ツールキット:ルックダウン

[11.1] ルックダウンはオプトアウトの手法である.11これは2016年の春,オスロのバーで,私とLARPデザイナーのTrine Lise Lindahlが何気ない会話の中で,ジェスチャーを提案したことから考案された.数週間後,テキサス州オースティンで開催された「Living Games」カンファレンスでの講演で,私はこの手法について言及した.その場で大きな反響を呼び,すぐにいくつかのゲームに採用されたが,中でも重要なのは『New World Magischola』(NWM; USA 2016)である.12

Fig. 3: The Lookdown
Fig. 3: The Lookdown

[11.2] 『End of the Line』では,ルックダウンを2つの方法で使用した.
1. プレイヤーが(キャラクターではなく)状況から抜け出したことを視覚的に示す手掛かりとして.例えば,プレイヤーの私は性行為がシミュレートされている部屋に入ったとしよう.それは明らかに本物ではないが,十分に本物に見え,他のみなさんが狂ったようにプレイしている間,私はおそらく,自分のキャラクターがその行為を見て感じるもの(ショック,落胆,欲望)は,私が今プレイすることに興味を感じるものではないことに気づく.その際,部屋を出ていくときにルックダウンを使うことで,基本的には他のキャラクターは私のキャラクターを追いかけたり,関わったりしてはいけないという合図をすることができる.
2. タップアウトと並行して使用する.『End of the Line』では,ルックダウンはプレイしている相手と連絡が取れなかった場合や,同時に複数のプレイヤーと交流していてタップアウトが現実的ではないと思われる場合にタップアウトの代わり使用できた.サイドバー 4で説明されるように,これはタップアウトと全く同じ2段階の手順で行われる.

[11.3] 最初の意味でのみルックダウンを使用することは絶対に可能である(これは,例えば,『New World Magischola』が行ったことである-興味深い微調整を加えて,以下を参照).最初の使用法のポイントは,以下の区別を可能にすることである:
• 「あなたのキャラクターが動揺して去っていく」場合,誰かがそれを見て反応した場合(理想的にはそのことについて話しに来たり,相手を殴りに来たり,何でもいいので)にのみ,面白いプレイが生まれる.
• 「プレイヤーとしてのあなたはシーンに参加しないことを選択する」場合,もちろん,あなたはそれについての対話を望んでいない,どこか他の場所で自分に合うプレイを探すことにする.

サイドバー 4: ルックダウン基本的な手順
  1. ルックダウンを実行するには,三猿の目を隠している一匹のように目の前で手をはっきりと上げる(図 3を参照).それは実際にあなたの視界を遮蔽しないことは理にかなっているので,あなたは部屋で何が起こっているかを見ることができ,実際にはあなたが眉の高さであなたの手の位置を維持し,下を見て,それの下から覗くだろうことを意味する.それが名前の由来である.
    もしあなたが振り向いて去った場合,あなたはその最初の意味でルックダウンを使用したことになる:シーンからオプトアウトして,シーンでプレイしている人たちに,あなたの後を追うべきではないことを合図するだけでなく,プレイを中止すべきではないことを示す.「プレイを続けてくれ.私はここで大丈夫だよ」.
    私が関わっているLARPでは,通常,これはプレイヤーとキャラクターの両方がその場を離れることを意味する.これがシームレスに動作するためには,どのキャラクターもどのシーンからでも立ち去ることがフィクションのロジックで可能でなければならない.
    本LARPはタップアウトと並行してルックダウンを使用していると仮定して,あなたがそのシーンに残る場合,タップアウトの手順は以下のように起動される.
  2. (デザインによってはオプション).誰かが「ルックダウン」のジェスチャーをして部屋に残っている場合,それは本質的にはタップアウトであり,誰もが彼らがしていることを停止する.最も重要なことは,もしあなたが誰かを抱きかかえている場合,あなたはその人を解放し,その人がシーンや部屋を離れたい場合にはその場を離れることができるようにする.
    離れる必要があれば,問答無用で行くことが許されている
    • 残る場合,このシーンを続けたいと言うことだが,それまでに起こっていた要素を少しだけ減らしてください.叫び声を減らし,セクシャル行動を減らし,動きの制限を減らして…みんなで少しずつ音量を下げて,プレイを続けていく.これについての詳細は,上記のタップアウトを参照してください).

[11.4] キャラクターの動揺をプレイできるようにするためには,実際にはプレイヤーが状況から自分自身を解放しているときにそれを示すジェスチャーが意味を持つ.これは「古典的な」ルックダウンであり,あなたがLARPでこれを使うことにすれば,ほとんどの場合,このジェスチャーにはこの意味だけを与えることになる.

[11.5] しかし,上記で説明した別の方法でジェスチャーを使用することも可能である(タップアウトと並行して).この2つ目の使用法が存在することで,もちろん,タップアウトのための唯一のジェスチャーとしてルックダウンを使用するという3つ目の選択肢も可能になる(つまり,ショルダータップジェスチャーを許可せずにルックダウンを使用すること).首を噛むような激しい状況の多くは,参加者がお互いの顔を見ることができないことを意味することを事前に知っていたので,『End of the Line』では,ルックダウンはタップアウトの代わりとしては機能しないと判断した.一方,タップアウトはその距離では非常に有効であるが,流動的かつ多人数のプレイヤーが居る状況や部屋の向こう側にはあまり実用的ではない.私たちはルックダウンをその最初の意味である「これを見たくない/プレイしたくない」という意味ですでに使用していたので,追加のハンドサインを導入する代わりに,タップアウトを示すジェスチャーの追加の意味を有効にすることが現実的であった.

[11.6] あらゆる種類のルールシステムをデザインするとき,特に興奮状態で使用されるルールや手法をデザインするとき,認知的な負荷を最小限に抑えることは重要なデザインパラメータである.言い換えれば,使用される手法をできるだけ少なくして,覚えやすく使いやすいものにすることである.見たくないものがあるときに目を覆うというのは,直感的に理解できることである.

12. プレイスタイルの強度の衝突とキャリブレーションデザイン

[12.1] アメリカのプレイヤーのための『End of the Line』では,ルックダウンを上述の両方の意味で使用した:オプトアウトの手法として,また多数のプレイヤーがいる状況でのタップアウトと並行して,あるいはある程度の距離でのタップアウトとして.これらは詳細な交渉用の特殊な言い回しと組み合わされていた.ある種のコンテンツ(官能性,暴力,またはヴァンパイアが誰かの血を飲むなど)にエスカレートすることに同意を求め,コンテンツのプレイスタイル(どのように物理的であるか,どのように抽象的であるか,その他の制限)を交渉する.

[12.2] このような手法の組み合わせにより,理論的には,すでにシーンが進行している,事前にプレイ強度が取り交わされている部屋に入って,その部屋にいるプレイヤーの一人と接触し,ルックダウン・アズ・タップアウトを直接使用することが可能になった.それにより,新規参入者が自分にとって快適なレベルで参加できるように,プレイスタイルの強度を下げることを効果的に要求することができる.

[12.3] 私の知る限りでは,このようなことは一度も起きていないが,このことに言及しているのは,キャリブレーションシステムを声高に反対する人たちの間で共通の心配事,つまり,一人の超敏感なプレイヤーや熱狂的なプレイヤーが,他のプレイヤーたちの好きなスタイルでのプレイを妨げてしまうということを反映しているからである.もちろん,その特定のプレイヤーとの直接的・顕在的な相互作用の中だけではなく,それはデ・エスカレーションの手法の目的でもあるが,他の快適なレベルのプレイヤーとの相互作用の中でも同様である.

[12.4] この異論はいくつかの点で興味深い.以下では,この問題に暗示されている規範に触れるが,まず,具体的な例の文脈で,そして一般的なデザイン問題として,この問題について議論する.

[12.5] そもそも,もし一部のプレイヤーがタップアウトやルックダウン・タップアウト,あるいは他のデエスカレーションの手法を積極的に使っていたとしたら,それはシステムに対するプレイヤーのニーズを反映したものである可能性が高いからである.このようなことが起こった場合,あなたが作っているLARPの種類や採用しているプレイヤーの種類に合わせてキャリブレーションのデザインが最適化されていないのかもしれない,ということを言いたいのである.例えば,プレイヤーの快適さのレベルのために重要なシーンからキャラクターを排除することがLARPのプロットの発展に重要であるならば,シミュレーションの手法をすべてのプレイヤーがプレイできるレベルに固定すべきである.

[12.6] オプションである必要があるほど強烈な相互作用を絶対にLARPで欲しい場合,その相互作用は必要に応じて,真にオプションである必要がある.つまり,拷問がシミュレートされている部屋の中に私が入ったときに,私が不快な思いをして振り向いて出て行ってもLARPの損失にならないようにするか,私の快適さのレベルを他のプレイヤーに強制することができるようにすべきである.他のプレイヤーが個人的に私のことをうるさいと思っているかどうかは全く関係ないはずである.

[12.7] しかし,実践では,人は必ずしも建設的な反応をするとは限らない.あるプレイヤーが「低強度のプレイは迷惑だ」と感じていることを口に出してしまうと,他のプレイヤーはそれを一種の仲間の圧力として感じてしまい,それがキャリブレーション・ツールを使う可能性に影響を与えてしまうのである.このことは,ディエスカレーションの手法を積極的に使用することは,参加したいと思うプレイヤーグループの活発性を低下させて「強制的に」参加させるためのあまり実用的なツールではないということを意味する.ほとんどのプレイヤーはプレイスタイルのキャリブレーションを求めるために現在進行中のプレイを「中断」するのが恥ずかしいので,その場に参加しないか,あるいは想像上の(あるいは実際の)仲間からのプレッシャーのためにセルフケアを放棄してしまう可能性が高いのである.それでも,これがあなたのデザインであり,シーンへの参加がプレイ体験に不可欠であり,プレイをしやすいようにキャリブレーションするための他の手法を提供していない場合,一部のプレイヤーは他のプレイヤーのプレイ強度を低下させるために積極的にデスカレーションの手法を非常に合理的に使用することになるであろう.

[12.8] もしこのような衝突が起こるとしたら,プレイヤーはいつでも(というよりもたまに)プレイの強度を好きなだけ高く設定できることを期待してあなたのLARPに入ってきており,規範システムがより高い強度やより現実的なシミュレーションが「より良い」ということを示唆しているからである.もしこれがプレイヤーの期待であるならば,あなたが選んだキャリブレーションの手法を使うことは社会的にコストのかかることになる.言い換えれば,うまくいかないし,あなたのデザインは粗末である.

[12.9] この状況で注意していただきたいのは,デザインにコミットしているのであれば,この問題は協働するプレイヤーの部屋のプレイスタイルの強度を低くしたいと思っている人が作ったものではないということである.この行為によって表出されるのは,そのようなルールを採用したイベントの参加者としてふさわしくないプレイヤーなのである.ここで言う「問題」とは,ルールに従うプレイヤーではなく,ルールに従うことを恥じるプレイヤーのことなのである.

[12.10] あなた自身が,最大3つの方法でこの問題を引き起こしている.デザインのカルチャーに合わないプレイヤーを採用してしまった可能性がある.妥協を犠牲にしてでも,すべてのプレイヤーがお互いの経験に投資できるようなプレイカルチャーを確立できていなかったかもしれない.あるいは,プレイヤーの期待や規範と一致しないシステムを選択しているかもしれない.

[12.11] 激しいインタラクションを可能にすることがあなたのLARPにとって本当に重要であるならば,もしあなたのLARPが物理的な状況の探索に特化したものであるならば,他の機能を持たずにルックダウンをオプトアウトツールとして使用する方が良いであろう.これはプレイヤーが他のプレイヤーの経験をコントロールすることができなくなる.タップアウトと組み合わせることもできる(別のジェスチャーとして).そうすることで,直接個人的な交流をしている人々(おそらく物理的な接触に限定されているかもしれないが)は,必要に応じてオプトアウトしたり,流動的にエスカレートを解除したりすることができる.

[12.12] または,LARPでどのような状況が起こりうるかをより明確にし,より限定的でニュアンスのあるキャリブレーションツールを提供し,プレイヤーのリクルートを非常に選択的にし(例えば,すべてのプレイヤーが匿名で他のプレイヤーの存在を拒否できるようにするなど),イベントのベースラインとして比較的高い事前の同意レベルを可能にするための徹底的なワークショップを実施することもできる.そのLARPは万人向けではない.これはOKである.万人向けのLARPが存在しない.『End of the Line』のアメリカ版は,内部的には似たような期待を持っているがLARPのスタイルに経験がない見知らぬ人たちが,非常に激しいテーマで非常に肉体的にプレイできるように意図的にデザインされていたが,それでもターゲットオーディエンスの中のすべてのプレイヤーに適したものにすることは不可能であった.

[12.13] また,どのプレイヤーもいつでも自分のレベルに合わせて全員のプレイの強さをデ・エスカレートできるLARPを作ることも可能である.しかし,あなたは最も快適な共通項を尊重するプレイカルチャーを確立しなければならないし,あなたの選択した手法の中に,状況にあるすべての新しいプレイヤーが自動的に新しいプレイスタイルの交渉を引き起こすようなルールを組み込まなければならない.これは面倒くさいように聞こえるかもしれないが,それぞれの手法はかなり目立たないようにすることができ,プレイエリアのレイアウトのような他のデザインツールを使用して,プレイヤーが連続して激しい魔法の儀式に誤って立ち寄ってしまうリスクを最小限に抑えることができる.もちろん,プレイヤーが高い信頼感と期待感を持ってプレイに参加できるように,プレイヤーの選択やその他のランタイム前の手順を非常に慎重にデザインする必要がある.

13. 物語上の交渉の文脈でのルックダウン

[13.1] 『New World Magischola』では面白いルックダウンのバリエーションが登場した:例えば,キャラクターが授業に遅れても,プレイヤーがその遅延をプレイアウトしたくない場合,ルックダウンのジェスチャーを使い始めた.このジェスチャーは「私はこれを見たくない」という意味と「私は見られたくない」という意味の両方を兼ねていて,基本的には誰もがそのキャラクターが他のみんなと一緒に授業の始まりに到着したかのように振る舞うべきだということを確立していた.

[13.2] このような使い方をすることは思いもよらないことなので,私は自分のプレイカルチャーの中にいくつかの暗黙の思い込みがあることに気がついた.ノルディックのLARPは基本的に競争ではなく協力的なものであり,プレイヤーは自分のキャラクターが常に目標を達成することを特に重視しない.その代わり,期待しているのは面白い状況であり,その観点からすると,授業に遅刻することはフィクションの中で社会的な結果をもたらす可能性が高く,それは新しいプロットの方向性や報酬のある感情状態に活用することができる.

[13.3] さらに,ノルディック・ラープでは,プレイヤーの身体は一般的にフィクションとのインターフェースとして概念化されている.プレイヤーの身体は通常,キャラクターの身体と視覚的に非常に似ていると仮定されている.空間,アクティビティ,そして時にはゲームの手法は,プレイヤーにフィクションのキャラクターの感覚的な体験を提供するようにデザインされている.また,多くのプレイヤーは,自分の身体的な反応を意図的にキャラクターの反応に合わせることで,キャラクターへの没入を目指して体系的に活動している.例えば,「自分のキャラクターがこれに対してどのように反応するか」という知的な三人称のプロセスではなく,「今,自分はどのように感じているか」ということを自分の体に投影して,それをキャラクターの方向性の入力として使うこともある.

[13.4] したがって,寄宿学校を舞台にしたLARPでプレイヤーが寝坊した場合,私の本能は常にそのキャラクターも寝坊したと判断するだろう.もし私が遅刻する理由が全く関係のないもの,例えばベビーシッターからの電話があった場合,私はキャラクター内で遅刻の理由を考え出して,何が起こるかを見てみる.例えば,私が居残りをさせられたとしても,それは意味のあるプレイを妨げる罰ではなく,全体的なデザインの中で意味のあるプロットラインや関係性を生み出すことになる.

[13.5] もちろん,これは自分のキャラクターのためだけではなく,他のプレイヤーはみんなのためにクールな体験を作ることに投資してくれているのを信頼している場合にのみ有効である.集団意識の低いプレイカルチャーでは,特に非常に競争的なシステムをプレイしている場合,以前のLARPでの経験から,一部または大部分のプレイヤーは,自分のキャラクターを成長させるためだけに屈辱的な状況を作ったり,プロットや面白いシーンへのアクセスをブロックしたりすることを快く思っていることを学んだプレイヤーがいるであろう.このような期待によって,架空の授業に遅刻するという社会的リスクは突然現実味を帯びてきた:他のプレイヤーからの軽率な罰は,文字通りLARPの楽しさと意味を奪ってしまうかもしれない.

[13.6] 『New World Magischola』はそのような競争的なゲームではないようにデザインされていて,『End of the Line』と同じように,自分のキャラクターがトラブルに巻き込まれることが楽しい体験への道として明確にアドバイスされていたのが,プレイヤーの多くは競争的,あるいは私が言うところの社会的に有毒なプレイカルチャーの背景を持っていた.そのような環境から来た彼らはもちろん,トラブルに巻き込まれるという提案が実際に機能するとは信じていなかった.特にLARPの最初の実行では信じていなかった.この文脈では,物語上の注意を先取りするためにルックダウンを使うことは完全に理にかなっている.

[13.7] この概念的なルックダウンの反復は,提案されたデザインと相反するプレイヤーの期待という非常に特殊な状況によって推進された.しかし,今では使用法が存在しているので,ほぼすべてのプレイカルチャーにおいて有用である状況を想像することは難しくない.必要に応じて抜け出すことを許されるのと同じくらい,疑われずに抜け出せることが重要な理由は枚挙にいとまがない.

[13.8] ここでの教訓は,LARPデザイナーのあなたが人間のためにデザインしているとき,彼らの個人的な荷物,文化的背景,プレイカルチャー的な期待は常に彼らのニーズやインタラクションに影響を与え,あなたの個人的な歴史だけでは想像もつかないような方法で影響を与えるということである.彼らがあなたのLARPで「間違った」プレイをしたり,あなたが提供したツールを予期せぬ方法で使用したり,誤ってLARPを壊したりしたとしても,それは彼らのせいではない.彼らの視点を想像できなかったのもあなたのせいではないかもしれないが,それがあなたの問題になることは確かで,それが起こったときに対処し,将来的にそれを防ぐのはあなたの責任である.だからこそテストが重要なのである.プレイヤーが導入した多くの問題は,ちょっとした手直しやより明確な指示によって簡単に回避できる.また,プレイヤーを多様化させることが,より良いデザイナーになる理由でもある.

14. 物語的衝突についての最終的な考察

[14.1] オプトアウトの手法は,プレイヤーの限界を尊重することについてのものである.理論的なレベルでは,それらがフィクションの中で何が起こるかを自動的に決定するわけではないことを理解することが重要である.しかし,上述のルックダウンのプレイヤーによる使用法で説明されているように,それぞれの手法がフィクションの中でプレイヤーが必要とする結果をどのように処理するかの手がかりを提供してくれるならば,それは有用である.

[14.2] ノルディックの伝統では,ランタイム中のプレイエリアでのプレイヤー発言・OOC行動を最小限に抑えることに重きを置いており,私たちのLARPには伝統的な意味でのプロットがあるわけではないので,フィクションの社会的なルールを手法のそれぞれに合わせることがエレガントな解決策である.例えば『Inside Hamlet』では,疎外と退屈が重要なテーマである.この宮廷LARPでは,フィクションの中の宮廷文化は常にすべての登場人物が状況に飽きて立ち去ることを可能にしていると考えた.たとえクラウディウス王自身が平民と話していたとしても,その平民は自由に立ち去ることができるのである.

[14.3] こういうカルチャーの中で,プレイヤーがタップアウトして立ち去ると,その場に残った他のプレイヤーが何かしらの意味をつけ,プレイを続ける.もしかしたらノーコメントでいいのかもしれない.もしかしたら,去っていったキャラクターは,その場の状況に負けてしまって,対応できないと思われているのかもしれない.もしかしたら,普通の人間と話をしていても途中で飽きて出ってしまうほどファッショナブルなのかもしれない(これはエルシノール城での一般的な行動であった).ファンタジーのLARPでは,いつでも「聖なる木立に行く」ことを許容できるかもしれない.SF LARPでは,テレポーターに何か問題があるのかもしれない.あるいは,吸血鬼のナイトクラブの登場人物たちは,たくさんのドラッグに見立てた物を飲んでいて,次の瞬間から次の瞬間まで集中するのが難しいために,獲物を逃がすことが問題ないかもしれない.

[14.4] プロットが一旦始まると止まることができないようなLARPは明らかに多く,また,プレイヤーが安全のための手法を使ってチートをしないようにお互いを信頼していないような有毒なプレイカルチャーもある.プレイヤーの一人が退場を望んでいて,シーンがまだ結論を必要としている場合にどうするかのルールをデザインに含める必要があるかもしれない.

[14.5] これを解決するための最も簡単な方法は,最初に双方のプレイヤーの幸福を考慮し,シーンの結果を口頭で合意することである.協働的なスタイルのLARPでは,プレイヤーは通常自分で交渉するが,他の多くのLARPでは,ゲームマスター,ストーリーテラー,レフェリーを召喚するのが理にかなっている.

[14.6] もし報酬の付加性が高い場合,例えばこの強盗や誘惑,交渉の結末によって他の多くのプレイヤーのプロットが影響を受ける場合,非常にシンプルな物語の結果解決の手法をLARPに導入することができる.すでに抽象的な紛争解決の手法がある場合,タップアウトがそれを覆す理由はない.最も多くのポイントを持っている人,またはダイスを正しく振った人が勝利する.ほとんどの場合,これはうまくいくであろう.しかし,あなたの特定のLARPとプレイヤーのためにデザインする必要がある:優れたシステムは,常に彼らの期待,カルチャー,ニーズに合わせてカスタマイズされている.

[14.7] 肉体的なインプットが激しいLARPでは,引き金になる可能性のある話題を扱ったり,見ず知らずのプレイヤーとの攻撃をリアルにシミュレートしたりすることがある.この場合,相手のプレイヤーが私を不安にさせるだけだから(それが本当の脅威に関係しているかどうかは別として),私はタップアウトするかもしれない.そのような状況では,私は彼らとは何もしたくないし,物語上の対立を解決するためにそばにいたいとは思わないかもしれない.ただし,よく考えてみて欲しい.LARPよりもプレイヤーの方が大事なのだ.もし私が怯えやすくてLARPに参加できなくても,私の幸福は客観的に見ても,他のプレイヤーの物語の結果よりも重要なのである.その時に,私がタップアウトして主催者に助けを求めれば,たいていの場合,満足のいく解決策が見つかるであろう.そして,プレイヤーが危機的状況に陥った時にあなたに助けを求めるほどあなたを信頼していないのであれば,個々のプロットラインの首尾一貫した解決は,おそらくあなたの問題の中では最も少ないものとなるであろう.いざという時には,参加者の信頼を得る必要がある.

[14.8] しかし,プレイヤーを信頼していないのがあなただとしたらどうであろうか?もしあなたがLARPプロジェクトを始めようとしていて,プレイヤーがお互いに正々堂々と交渉しようとしないと思っていたり,プレイヤーがお互いを恐れていて会話ができない状況がたくさんあるとしたら,あなたのLARPを安全に,あるいは完全にプレイできるようにするキャリブレーションシステムはこの世界には存在しない.そのような状況では,プレイヤーの選択とプレイカルチャーの積極的なデザインを通してプレイヤーの集団の性質にどれだけ影響を与えることができるか,LARPの物理的な空間,架空の文化,キャラクターのアジェンダのデザインを通してどれだけリスクを減らしたり行動を促すことができるか,そして現実的に達成できる安全と信頼のレベルに合うようにテーマ,トピック,活動をどのように適応させるかを評価しなければならない.

[14.9] 実際,これらは暗黙のうちに信頼しているプレイヤーのための最適な安全性とキャリブレーションシステムを作成するためにあなたが行うであろう手順と全く同じである.多くの場合,デザインがそれをサポートしているときにプレイヤーのアンサンブルが達成できる信頼と相互ケアには限界がないこと,成熟したプレイヤーは成熟した話題や難しい話題をニュアンスと敬意を持って扱うことができること,身体的に困難な状況はLARPのプレイヤーにとっても,スポーツのプレイヤーやダンスやパフォーマンスのような身体的に要求の厳しい芸術の実践者にとっても同じように適切であることがわかる.

[14.10] 安全とキャリブレーションデザインは,あなたが選んだデザインをあなたが選んだプレイヤーにプレイしてもらえるようにすることがすべてである.もしあなたが自分の仕事をうまくこなしているのであれば,最終的に問題となるのは,プレイヤーがどのような体験を求め,創造したいと思っているかではない(私の経験では,すべての体験にはどこかで観客がいるものです).感覚的,心理的,物語性の強さは,強力な体験への簡単な近道ではあるが,それが必ずしも最も面白いストーリーや意味のあるストーリーを生み出すとは限らない.最終的には,すべてのLARPデザインと同様に,作品のインパクトは,参加者の行動が作品全体のテーマとどれだけ一致しているかで測られる.

  1. https://goteborgfilmfestival.se/nostradamus を参照 (2020年8月21日取得).↩︎

  2. ランタイムとは,大まかに言えば,キャラクターが演じられている間のLARPの部分のことである.デザインされたLARPは他の部分を含むことがあり,例えば,到着時のチェックインプロセス,構造化されたワークショップ,現場での構造化されていない準備時間,演劇を反映したり発展させたりするための促進されたプロセスを伴うか否かに関わらず,アクトブレイク,ランタイム後のリフレクション,減圧,アフターケア活動などである.↩︎

  3. 「ノルディック・ラープ」については,カム(2019)を参照.↩︎

  4. LARPにおける「キャリブレーション」とは,プレイヤーがプレイスタイルや物理的・心理的な強さ,時にはジャンル,音色,ペーシングなどを交渉しなければならない多くの明示的・暗黙的な方法のことである.このテキストの文脈では,最初の二つの意味に限定する.↩︎

  5. LARPデザインの言説では,「ダイエジェティック(diegetic)」は映画研究の意味で使われており,「フィクションの中に存在する」という意味である.これは演劇の専門家にとっては混乱を招くが,LARPは演劇の子孫ではなく,それ自身の獣であることを思い出させてくれる.↩︎

  6. 複雑な複数日のイベントは大規模でテストができないため,そのようなイベントが主流であるLARPでは,全くテストを行わない傾向がある.全体はテストできなくても,要素や手法,技術はもちろん部分的にテストができる.幸いにもこのテストしない状況は変わりつつある.↩︎

  7. また,もし人々が何度もあなたとのプレイを拒否するならば,実際にはあなたはそのLARPの求める雰囲気に同期していないかもしれないことにも注意してください.その場合は,チームメンバーと話し合って,あなたのプレイを調整するために何か提案があるかどうかを確認することも良いかもしれない.↩︎

  8. アメリカのLARPを一つのもののように一般化するのは不合理的である.マサチューセッツだけでも北欧諸国と同じくらいの人数のLARPERがいるであろうし,地域差は大きく,インディーズのワンショットのプレイシーンは活気に満ちている.しかし,アメリカのLARPの中で最も目に見えて人気のあるタイプのものは,ジャンルを問わず,北欧のLARPの伝統とは大きく異なる多くの資質を持っている.複雑な統計的ルールシステムに基づいた競争的なデザインとプレイカルチャーであり,最も有意義なプレイ体験へのアクセスとフランチャイズ内でのプレイヤーとしての年功序列を相関させることで,キャンペーンのプレイに報い,リピーターとなる顧客に報いる環境の中で制作されている.営利的なLARPでも,非営利のLARPでも,プレイヤーは,イベントを一緒に何かを作る機会としてではなく,お金のために価値を提供するべき商業サービスとして概念化する傾向がある.↩︎

  9. 多くのプレイヤーは,ヒットポイントを失うことで怪我が表現されるシステムしか経験していなかった.彼らにとって,ノルディック・スタイルのLARPでは,ロールプレイによって肉体的・精神的な苦痛が表現されるため,より没入感のあるものとなり,魅力的なものとなっていた.他のプレイヤーが怪我をしたかどうかをどうやって知るのであろうか,彼らに不明であった.それを知るための手法を提供することは,この心配を軽減するために重要であった.↩︎

  10. 2016年6月と7月に開催されたNWMの最初の4回の実行と,9月初旬に開催された『End of the Line』のニューオーリンズ実行の間に,全米各地の様々なローカルLARPプレイカルチャーから約750人のプレイヤーがこのタイプのデザインに触れた.↩︎

  11. 『安心からの脱出』LARPでの「身を引く」と同じ手法である(日本,2017)↩︎

  12. NWMの安全とキャリブレーションシステムは複雑ではあるが,よく統合されて,Maury Brown,Sarah Lynne Bowman,Harrison Greeneの手によるものである[手法の詳細については@brown2016を参照].↩︎

参考文献

Brown, Maury. 2016. Creating a Culture of Trust through Safety and Calibration Larp Mechanics. Nordic Larp. https://nordiclarp.org/2016/09/09/creating-culture-trust-safety-calibration-larp-mechanics/ (accessed 2020/8/21).

Koljonen, Johanna, and Nina von Rüdiger. 2012. Oblivion High. Hägersten: Kolik.

———. 2014. Oblivion High 2. Hägersten: Kolik.

Koljonen, Johanna, Jaakko Stenros, Anne Serup Grove, Aina D. Skjørnsfjell, and Elin Nilsen, eds. 2019. Larp Design: Creating Role-Play Experiences. Copenhagen: Landsforeningen Bifrost.

カムビョーン=オーレ. 2019. 「Nordic Larp」入門: 芸術・政治的な教育LARPの理論と実践. RPG学研究, no. 0: 5–14. doi:10.14989/jarps_0_05.

ゲーム目録

Brown, Maury Elizabeth, Ben Morrow, Mikolaj Wicher, Claire Wilshire, and LernLarp, LLC. 2016. New World Magischola. Larp. Richmond, Virginia, 米国. サイト: magischola.com.

Ericsson, Martin, Bjarke Pedersen, Johanna Koljonen, and Participation | Design | Agency. 2015. Inside Hamlet. Larp. Elsinore Castle, Helsingør, デンマーク. サイト: www.insidehamlet.com.

Montero, Esperanza, and NotOnlyLarp. 2018. Conscience. Larp. Tabernas, Almería, スペイン. サイト: conscience.notonlylarp.com.

Pedersen, Bjarke, Juhana Pettersson, Martin Ericsson, and Participation | Design | Agency. 2016, 2017. End of the Line. Larp. Helsinki, フィンランド; New Orleans, 米国; and Berlin, ドイツ. サイト: www.participation.design/end-of-the-line.

Udby, Linda, Bjarke Pedersen, and Participation | Design | Agency. 2015. BAPHOMET. Larp. Lungholm Estate, デンマーク. サイト: www.pantrilogy.com/baphomet.

カムビョーン=オーレ, 加藤浩平, and CLOSS. 2017, 2018. 安心からの脱出. LARP. 京都,東京他,日本. サイト: www.b-ok.de/ja/vsc_larp/.